彼女の農家でこれまで受け入れた30人の実習生のうち、5人が失踪し、1人が逃亡未遂。隣の花農家では、
約15年間で受け入れた約100人のうち10人以上が逃げたという。日本全国で25万人の実習生がいて、昨年1年で約6000人、
今年は半年で4278人が逃げたという統計がある。この島ではそれが実感できる。

 「いつも『誰がいつ逃げるかなー』って思っちゃう。もう人間不信」

 彼女は少し笑った。

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 別の農家の男性は話す。そしてこう続ける。

 「だからこそ、新しい制度では逃亡をもっと厳しい罰則にしてほしい。実習生も、逃げ通せば、稼げるんだよね? 
それでまた、逃げた実習生を働かせて、もうけている人がいるんでしょ。これじゃ、永良部は日本への入り口ってことで利用されてるだけだ」

 この農家の男性は、1人の実習生を入れるために、渡航費や初期研修費など数十万を払っている。3年間、
働いてもらう予定で作業計画をたてているのに、失踪されるとその「投資」は無駄になる上、一定期間、次の研修生を入れることができない。


 別の農家の男性は 「そりゃあの子たちも、お金のいいところに行きたいだろう」と、外国から来た若者たちへの同情を示しつつ、
「時給を上げれば人が来るかって? 時給千円にしたら経営が成り立たないし、
そんな仕事があれば自分が雇われたい」と言った。

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外国人入れれば「人手不足解消」か

 実習生の失踪は、必ずしも酷い低賃金や待遇が原因とは限らない。この制度の問題の根深さの一つだ。
現場では、国際貢献や技術移転は建前だとみんな知っている。

 国が地域格差の解消や新たな産業創出に取り組まず、安直に外国人労働者を入れれば、地域間格差は一層広がる。
政府は「外国人労働者を入れれば『人手不足』が解消され問題解決」という幻想を、ふりまいていないだろうか。

 沖永良部の人たちは、「外国人材の受け入れ」という熱狂とはほど遠い、あきらめの中にいるように見えた。
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