「ちくわを1本、まるごと天ぷらにしただけか」と思ったら大間違い。ガブリといけば、穴の中からポテトサラダが−−。
それが「ちくわサラダ」だ。熊本を中心に北部九州4県で弁当・総菜店約150店舗を展開している「ヒライ」(本社・熊本市)が1971年ごろに考案。熊本市内の店舗で売り始めたところ、意外にも大ヒット。今や熊本県民のソウルフードの一つとなっている。

 ヒライによると当時、ポテトサラダがよく売れて大量に作っていた。そんな中「ちくわにポテトサラダを組み合わせたらどうか」と作ってみたのが始まりという。
ちくわにタテの切れ目を入れて開き、真ん中の穴にポテトサラダを詰め、天ぷらにする。作り方はいたってシンプルだ。

 ボリュームがありつつ、価格も1本150円と安い。食事のおかずとしてだけでなく、子どものおやつにもOK。お父さんたちには、ビールが進むこと請け合いだ。
ビニール袋に入れてそのままパクつくことができる手軽さから、トラックのドライバーたちにも人気が高いという。

 熊本県内での年間販売数は約200万本に上る。他県の店舗でも販売しているが、売り上げは熊本県が断トツだという。
ちなみに熊本県内店舗での販売本数のベスト3は(1)阿蘇坊中店(阿蘇市)(2)大矢野店(上天草市)(3)水俣店(水俣市)−−で、熊本市周辺だけでなく熊本県全域に広がっている。

 ヒライでは、プリプリ感のあるちくわサラダ専用のちくわをメーカーと共同開発し、ポテトサラダのマヨネーズにもこだわるなど改良を重ねた。

 このちくわサラダ、今ではヒライ以外の総菜店やスーパーにも製造・販売が広がっている。
熊本県内でちくわといえば「日奈久(ひなぐ)ちくわ」で知られる同県八代市の日奈久温泉では、69年創業の「とらや」が5年ほど前からちくわサラダを店頭で揚げて即売している。

 3代目の島龍太郎さん(37)は
「日奈久ちくわは上質な魚のすり身を使い、ちくわそのものがおいしい。価格は250円だが、そのおいしさを生かしたちくわサラダに仕上げている」
と話す。全国各地で開かれる熊本名産品のイベントに呼ばれることも多く、実演販売すると、来場者に好評だという。

 こうした広がりに、元祖のヒライは
「熊本県民のソウルフードとして、日本全国からわざわざお買い求めに来る方もいます。もっと日本に、いや世界中にちくわサラダを広められるよう盛り上げていきましょう」
と話している。【笠井光俊】

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