トップ棋士が「角のワープ」で反則負け 109手目の痛恨ミス

 使い古された言葉ではあるが、本当に将棋は怖い・・・。改めてそうつぶやかざるを得ないような事件が、
10月18日夜、関西将棋会館で起きた。トップクラスの棋士である菅井竜也七段が、
なんと反則負けをしてしまったのだ。

 7回戦の中の一局では、橋本崇載八段(34歳)と菅井竜也七段(26歳)が対戦した。
 橋本八段は数多くの名パフォーマンスで知られる、将棋界の人気者である。かつてはA級に
在籍していたことからもわかる通り、その実力は定評がある。
 一方の菅井竜也七段は、これからA級をうかがおうという若手。昨年度から今年度に至るまでは
「王位」のタイトルを保持していた。今年度の七番勝負で豊島将之棋聖の挑戦を受け、フルセットの
末に3勝4敗で敗れてタイトルを失ったが、それでも現在の将棋界のトップクラスであることに変わりはない。
何よりも、現在当たるべからざる勢いの藤井聡太現七段を相手に、過去に2戦して2回とも圧勝していることからも、その圧倒的な技量の高さがうかがえるだろう。

 橋本ー菅井戦の詳しい棋譜については、「名人戦棋譜速報」(有料サービス)で公開されているので、
ぜひそちらをご覧いただきたい。

 事件が起こったのは、109手目である。ここでは部分的な図面だけ示すが、以下のような駒の配置となっていた。

 先手は角が当たり(次に取られてしまう)なので、それを受ける必要がある。ここでは▲6八角と、
後手の「と金」(成り歩)を取っていたら、依然先手が優勢だった。しかし次の一手は▲4六角!

 なんと、相手の駒(と金)を飛び越えて、ワープしてしまったのだ。普段の菅井七段からすれば、
とても考えられないような落手である。飛車は縦横、角は斜めにどこまでも動かすことができるが、
自分や相手の駒を飛び越すことはできない。それが鉄則である。

 将棋界の対局規定では、反則は指した方が即負けとなる。菅井七段はまさかの大ポカで、
大きな一番を失ってしまった。まさに将棋は怖い、としか言いようがない。菅井七段がどうして
反則をしてしまったのかについては、今後の続報を待ちたい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20181018-00100991/