私は約束通りに「白いロングコートに赤い靴」姿で、指定された東京都内の駅前に立った。今年1月中旬のことだ。

帰宅ラッシュの中、男性が近づいてきた。「記者さんですか?」。それが「迷惑メール」に関わっていたというシステムエンジニア、佐藤さん(30代、仮名)との出会いだった。

 携帯電話やスマートフォンに届き、詐欺被害にもつながる迷惑メール。読者から苦情の声も届いていた。
誰が、どうやって送っているのか。謎に迫りたくて昨年11月、創設された「あなたの特命取材班」の一人として関係者を捜し始めた。


知人に片っ端から当たり、現役の迷惑メール送信業者と事情に詳しい元ハッカーを突き止めたが、取材は断られた。業者の男性は言った。
「業者ごとに手口に特徴があり、しゃべると自分の身が危うくなる」

 心がくじけかけた今年1月、知人の知人のそのまた知人である元関係者にたどり着いた。それが、前述の佐藤さんだった。

 顔や名前も知らされないまま、指定場所に立った時は緊張で胸が高鳴った。どれほどの極悪人かと身構えていたが、
居酒屋の片隅で顔を突き合わせた佐藤さんは、柔和な笑顔を浮かべる「いい人」そのもの。とても迷惑メールに関わっていた人物には見えなかった。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181015-00010002-nishinp-sci