ソ連時代に逆戻り? 政治将校を復活させるロシア
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180927-00054202-jbpressz-eurp

今年9月はじめ、ロシアの有力紙『イズヴェスチヤ』が、ロシア軍の各部隊に政治担当補佐官(ザムポリト)が復活する予定であると報じた。

 ザムポリトと言われても、多くの読者には何のことだか分からないだろう。しかし、その通称である「政治将校」という言葉なら聞いたことのある方も多いのではないだろうか。

 ソ連軍を部隊にした映画や小説には必ず(大体は好ましくない姿で)登場する、共産党のお目付役である。

■ 軍のお目付け役で嫌われ者

 例えばトム・クランシー原作の傑作映画『レッド・オクトーバーを追え』では、ショーン・コネリー扮するソ連の原潜艦長とその部下たちが潜水艦ごと米国に亡命を企てた。

 その際、邪魔者として真っ先に消されたのは政治将校であった。ちなみに全くの偶然ながら、この時の気の毒な政治将校の名は(イワン・)プーチン氏だった。

 政治将校については、かなり以前に小欄でも触れたことがある(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35471)。

 政治将校の役割はソ連共産党によるソ連軍の統制(言うなれば「赤いシビリアン・コントロール」)を確保することであり、それゆえに軍内部の嫌われ者というイメージを持たれてきた。

 しかし、実際の政治将校が西側のフィクションのような扱いを受けていたという証拠は乏しい。

 どちらかいうと部隊内の規律維持や司令官の補佐、さらにはレクリエーション活動のロジに至るまで、軍隊生活の運営に関して不可欠の役割を果たす特殊な軍人という方が公平な政治将校像ではないかと思われる。

 ただ、政治将校とは共産党による一党独裁体制を軍事面で支えるための制度であったから、ソ連が崩壊すると、共産党の出先機関であるソ連軍政治総局(GPU)とともに姿を消した。

■ 旧ソ連軍に近い組織として復活

 これに代わって設置されたのが規律業務総局(GUVR。名称やステータスは度々変化している)であり、部隊内の規律維持、愛国教育、士気向上などを任務とする点では軍政治総局のそれを一部引き継ぐものであったと言える。

 また、麻薬の流通をはじめとする部隊内の犯罪に目を光らせ、事前に防止することも規律将校の重要な役割であった。

 しかし、GUVRの規律将校は政治将校のように全軍の隅々に配置されているわけではなく、特定のイデオロギーを掲げるわけでもないという点で政治将校とは異なる存在であっと言える。

 ところが『イズヴェスチヤ』が報じた匿名情報によると、新たに設置される政治担当補佐官はどうもかつての政治将校により近い存在を目指しているようだ。

 まず、この政治担当補佐官は連隊、大隊、さらには中隊レベルにまで設置されるとのことであるから、ロシア軍の隅々にまで配属されることになろう。