貿易戦争は中国経済にプラス、米成長阻害の可能性−ECB

世界的な関税賦課合戦は12兆ドル(約1355兆円)規模の中国経済にプラスとなり、米国の経済成長を阻害する可能性がある。欧州中央銀行(ECB)の研究が示した。

  これは、貿易戦争は「良いもので、簡単に勝てる」とするトランプ米大統領の自信を否定する研究結果だ。輸出依存の大きい中国の方が米国との貿易紛争で被る打撃が大きいという議論にも反している。

  ECBは、米国が全ての輸入品に10%の関税を課し、貿易相手国も同等の措置で対応すると仮定。そのようなシナリオの場合、中国は製品を他の市場で販売することで損失を十二分に穴埋めすることができる。
一方、投資と貿易への打撃によって米国の経済活動は関税賦課開始後の最初の1年に2%押し下げられる。その後は、米国が自国の生産を調整することで影響は薄れると予想されている。

  ECBのエコノミスト、アラン・グロー・ディジオリ、ビヨルン・ファンロワ両氏は報告で「定性的には、結果は明白だ。
関税を賦課し他国からの報復を引き起こす国が明らかにより大きな打撃を受ける」とし、「生活水準が下がり、雇用は失われる」と論じた。

  ECBはまた、これまでにとられた保護主義的措置の世界経済への影響は小さいとも指摘。対象の製品は世界貿易の小さな部分を占めるにすぎないと説明した。

  ブルームバーグ・エコノミクスはこれまでの関税措置が中国の成長を年間0.5ポイント押し下げ、対象がさらに拡大すれば影響は最大1.5ポイントになると試算。
また、オックスフォード・エコノミクスは米国の2019年成長が0.4ポイント押し下げられるとみている。ECBの研究は企業景況感と消費者信頼感の悪化による増幅効果を織り込んでいるため、影響をより大きく見積もっている。

  「世界の金融市場の反応は各国の生産に対してより広範な影響を与えるだろう。世界の生産は最初の1年に0.75%前後低下するだろう」とECBの両エコノミストは予想。
「金融環境が引き締まることで米国の国内総生産(GDP)は約0.7%押し下げられ」、同国株式相場は16%下がるとみている。

  研究では、ユーロ圏への影響は数値として示されていない。


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-09-26/PFNBL26S972801?srnd=cojp-v2