日本の防衛産業に逆風が吹いている。安倍政権の下、防衛費は増加し続けているものの、
自衛隊向けの国産武器のシェアは米国製品に押されぎみで、輸出解禁後の海外契約実績もゼロに近い。
政府は、国内防衛産業基盤の維持と輸出の拡大を掲げているが、「雲行きは怪しい」
(ディフェンス・ニュース)と、海外メディアの見方も厳しい。

ディフェンス・ニュースは、日本のFMS(米政府を通じて高性能武器を購入するプログラム)が、
2016年度に5年前の10倍を超える過去最高の44億ドルに跳ね上がった点に着目。
防衛力強化を掲げる安倍政権と武器輸出に熱心なトランプ政権の発足が重なった影響が顕著に表れた。

一方、国産戦闘機の三菱F-2が生産終了し、後継機の国内開発が暗礁に乗り上げるなど、
特に航空自衛隊では相対的にアメリカ製武器への依存度が高くなっている。
ブルームバーグは、2015年からFMSが急増している背景として、F-35A戦闘機、
オスプレイ垂直離着陸機、イージスシステムなどの米国製高額武器の購入が重なっている点を挙げている

国産武器の主要なハードルはコストだ。ディフェンス・ニュースは、国産武器の高コストの要因は、
「日本の小さくニッチな防衛市場」と、専守防衛という世界に稀に見る軍隊のあり方による
「ユニークな要求」にあるとしている。ブルームバーグは、その象徴的な事例として、
財務省が、三菱重工製のC-2輸送機の生産をやめ、米国からC-130輸送機を輸入するべきだと
安倍政権に提案した件を挙げている。C-130は、C-2よりも積載能力と速度で劣るが、
不整地離着陸性能では勝るとされ、コストは半額だ。

FMSの拡大に伴う国内防衛産業の縮小は、現場で実感として現れている。
防衛省の2016年の調査に対し、関連企業72社の約7割に当たる52社が
「部品等を製造する企業の事業撤退、倒産による供給途絶が顕在化した」と回答した。
例えば、横浜ゴムは、F-2の生産終了に伴い、自衛隊向けの航空機用タイヤ事業から撤退した。
こうした現状に対し、三菱重工の阿部直彦執行役員は、FMSでは国内部品メーカーに
「仕事が降りてこない」と指摘し、技術基盤を支えてきた企業が「いなくなっていく」と懸念する(ブルームバーグ)。

Aug 17 2018
https://newsphere.jp/world-report/20180817-1/2/