「脱ゆとり教育」によって教科書が分厚くなるなど子どもたちの通学かばんやランドセルが重くなっている。つらい実態を緩和しようと、
教材を教室に一部置いて帰る「置き勉」を認める学校が徐々に増えている。一方、家庭学習への影響を心配する声もある。

 小高い丘の上にある広島市立牛田中。国数理社英の5教科の教材は自宅に持ち帰るルールだったが、4月から英語と国語の一部教材を除き、置き勉を認めた。

 見直しのきっかけの一つが、PC放送部が昨年に作った8分20秒の動画「The School Bag is Heavy!!
(学校のかばんが重い)」。ある生徒のリュックやサブバッグなどの荷物を量ると18・4キロだった。生徒らにインタビューし、「坂道がとてもつらい」「転びそうになった」「(ひもが)肩にめり込む」などと訴える内容だ。

 テーマを提案したのは、2年の足立こころさん(13)。入学時、かばんの重さに驚いた。教科書にノート、
プリントファイル、水筒……。靴箱で上靴に履き替えようとしゃがむと、体を起こせないほど重く、「軽くしたい」と思った。

 動画は解決策として「置き勉」を提案する。忘れ物が増える、宿題をしなくなる、教室が汚くなるといった懸念も伝え、
「キーワードは『信頼』。大丈夫だと思わせる生徒力が問われている」と結ぶ。作品は市主催の文化祭で優勝し、動画サイト(https://www.youtube.com/watch?v=JyB7hXlaXQo&;feature=youtu.be)別ウインドウで開きますにもアップした。

 学校側も重さ対策を検討中で、タイミングもよかった。三村千秋校長(59)は「何のために置き、何のために持って帰るのか。ルールを押しつけるのではなく、生徒が主体的に考え
ることが大事」と話す。

 昨年6月、埼玉県熊谷市のホームページ「市長へのメール」に中学生の母親からこんなメールが届いた。「息子の今日の荷物総重量は
17・8キロでした。徒歩通学で片道約35分。本人は体重40キロに満たないため、登下校は大変だと思います」。入学して2カ月。生徒のジャケットの裏地は擦り切れてしまったという。

 市教育委員会が対策の検討を指示し、自宅で使わない教科書の「置き勉」を認める小学校や中学校も出てきた。市教委の担当者は
「学校単位ではなく、市全体で取り組める対策がないか検討している」と話す。

 千葉県流山市でも昨年、市民の声を受け、荷物を減らせるよう検討することなどが校長会で決まった。

 福岡市教委も3月末、市立中学に負担軽減対策を求める通知を初めて出した
。担当者は「重さでふらつくこともあり、通学時の安全面からも対策を促した」と説明する。昨年12月、PTA会報誌で通学かばんの重さを取り上げた、市立警固中の後藤富和・
PTA会長(49)は「知恵と工夫で、学校と一緒に子どもの負担を減らしたい」と話す。




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