「朝日新聞」を批判する言説は、今やひとつのマーケットを確立したと言っていいほど巷に溢れている。
なぜ「朝日」に象徴される「日本のリベラリズム=戦後民主主義」はこれほど激しく嫌われるのか。話題の新刊『朝日ぎらい』でその背景を分析した、作家の橘玲氏が語った。
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「朝日」を見たら読まずに「嫌い」

 『朝日ぎらい』発売後の反響を見ていると、世の中にはあらゆる物事を「党派」に分けて判断したがる人がいかに多いか、よくわかります。

 本書に関するネットのレビューには、「朝日新聞出版が発行しているんだから、朝日を擁護する内容に違いない」と決めつけて、
「こんな本は絶対に読まないし、買わない」と書き込む人や、「自民党のことを『保守』と解釈している時点で、この本は終わっている」といった意見がありました。

 本の冒頭で断っているように、これは朝日新聞を擁護するものでも、批判するものでもありませんし、目次の最初には「安倍政権はリベラル」とはっきり書いてあります。

 「読みたくない」「買わない」というのもひとつの意見なのかもしれませんが、「自民党を『保守』と解釈している」という類のレビューは、本文はもちろん目次すら読まずに書かれたものです。

 なぜ内容もわからない本の「レビュー」が堂々とできるかというと、あらゆる物事を「党派」に分け、
「俺たち」に属さない者に「敵」のレッテルを貼って批判することが絶対の正義だと信じているからです。

 世界を善と悪に分割してしまえば自分の立ち位置が安定するし、仲間がいるから安心できる。
そういうシンプルな生き方しかできない人が、日本にも世界にもものすごくたくさんいます。

 これが、『朝日ぎらい』を朝日新書でしか出せない理由でもあります。他社から出したとしたら、
たちまち「アンチ朝日」の党派に組み込まれて、毎月「朝日ぎらい」をやっているひとたちと一緒くたにされるのは間違いありませんから。


以下ソースで
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180711-00056469-gendaibiz-bus_all