濁流が覆う陸の孤島 断水の呉

https://www.asahi.com/articles/ASL7B05DVL79PTIL05Y.html

三方にそびえる山と、目の前に浮かぶ島々に囲まれた広島県呉市。約130年前、
この天然の要塞(ようさい)に軍港が築かれ、軍の機密とされた戦艦「大和」建造の地にも選ばれた。
いまも22万人が暮らすこの地を、豪雨による土砂や濁流が覆い、街は陸の孤島になった。

水不足も深刻だ。
9日朝、海上自衛隊呉基地。普段は開かない「D(デルタ)門」と呼ばれる門が開き、
市民が次々と車で訪れた。目当ては基地に停泊する護衛艦「かが」など4隻の風呂だ。
隊員が「入浴まで3時間待ち」の札を立てたが、引き返す車はない。

水道の断水を受け、海自が8日に始めた。艦内の洗濯機も開放し、給水所も基地内に設けた。
呉市の対岸の江田島市からも住民を乗せた揚陸艇が行き来し、艦内に特設した風呂に入ってもらっている。
家族4人で訪れた呉市の主婦(36)は「地元の給水所では4時間も待った。ここでは入浴を待つ間に水を詰め、
洗濯もできる」と笑顔を見せた。
断水の原因は、広島市を流れる太田川から呉、江田島両市などに水を送る水道用トンネルのトラブルだ。
豪雨が襲った6日夜に発生し、2市で10万世帯、約20万人に影響が出ている。広島県によると、
トンネルに土砂が入ったのが原因で、復旧の時期は見えない。

呉市は7日から各地で給水を続けているが、主力の給水車は1回に300リットルしか運べない。