カナダ・トロントで4月23日に起きた、歩行者が次々とバンにはねられ10人が死亡した事件で、逮捕されたアレック・ミナシアン容疑者は、
「インセルたちの反乱」についてフェイスブックに書き込みをしていたことが明らかになり、これまであまり知られていなかったインターネット上のサブカルチャー、
インボランタリー・セリベイト(Involuntary celibate、不本意の禁欲主義者)、略して「インセル」への関心が高まった。
インセルのネット掲示板に書き込みをしている若い男性たちはどんな人たちなのか。

「言うまでもなく、女性が僕を好きになってくれる可能性なんて元々あんまりない」

シカゴに住むジャック・ピーターソンさん(19)はこう語る。彼も米掲示板サイト「レディット」などで、インセルに関するサイトを訪れる多くの若い男性たちの一人だ。
「恋愛でいやな経験を何度かしたことがあるから、どんな気分になるか分かりますよね(中略)過去にこだわらずに新しい恋愛を始めるのは難しい」とジャックさんは語る。
「女性にかなりひどいことをされたことがあるんです」。

このような失敗やいら立ち、怒りや憎しみの空気は、どのインセルの掲示板にも共通している。
筆者はインセルの一員だと語る若い男性数人と接触した。10代から20代前半で、女性から拒否されたり、女性に関して嫌な体験をしていた。
掲示板を使うのは孤独感からだ。そこには、自分たちは遺伝子のくじ引きの負け組で、なすすべがほぼないと主張する、怒りを抱えた男性たちがいる。

YouTubeやポッドキャストで自分のチャンネルを持っているジャックさんは、トロントの事件が起きた後にメディア取材に応じている数少ないインセルたちの一人だ。
偽名でなら取材に応じると話した人もいた。恋愛がうまくできないのを恥ずかしく思っているせいもあるが、多くの人は極端な意見も持っているのを知られたくないと思っている。
仮に名前をリアムとしておこう。英国に住む19歳の彼は、もっと低年齢だったころから掲示板に活発に参加してきた。家族と同居しており、無職だ。

続く
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44153194