同志社大留学中に治安維持法違反で逮捕され、獄死した韓国の国民的詩人・尹東柱(ユンドンジュ)(1917〜45年)を後世に伝えようと、ゆかりの地である宇治川沿いの宇治市志津川に昨秋建てられた詩碑を、この半年に国内外から多くの見学者が訪れている。

建立した市民団体は「負の歴史に光を当てる『ダークツーリズム』として注目されているのでは。過去を直視することで、ダークがピース(平和)になる」とし、この場から平和活動を広げていくつもりだ。

詩碑は「詩人尹東柱記念碑建立委員会」(代表・安斎育郎立命館大名誉教授)が12年がかりで建てた。友人と訪れた尹が、生前最後の写真に納まった天ケ瀬つり橋から約300メートル上流にある。

昨年10月28日の除幕式以降、建立委員会や市などに問い合わせが続く。委員会の紺谷延子事務局長は「月2度ほど訪れるが、いつ見ても花束や飲み物、尹の詩集がささげられている」。
詩人のアーサー・ビナードさんも委員会メンバーの案内で訪問し、「いい機会になった」と熱心にメモを取っていたという。

詩碑の建立は韓国でも報道され、同国からの観光客も多い。紺谷さんは「あなたを知っている、と突然声を掛けられたこともある」と笑う。今年1月18日には韓国の教員団体が花を手向けてアリランを合唱した。
団体の金太彬代表は「尹東柱が青春を楽しんだ意味ある地に、日本の方々が碑を建てられて感激している」と述べた。

紺谷さんらは27日に予定される南北首脳会談に注目している。「尹が通った中学は現在の北朝鮮にあり、大学は今の韓国。(詩碑に刻まれている)尹の作品『新しい道』を口ずさみながら、38度線を自由に行き来できる日が来てほしい」

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