南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で開かれた南北首脳会談では、ソウル近郊にプレスセンターが設けられ、韓国内外の記者ら
約千人が会見場の巨大スクリーンに映る金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の一挙手一投
足にくぎ付けとなった。両首脳が初めて握手する瞬間はどよめきや拍手が起きたが、それ以上に会見場を沸かせた場面がある。

 金正恩氏と文氏が韓国側施設に入った後、スクリーンに人の後頭部が大写しになり、2人の姿が見えなくなった。北朝鮮のカメラマンが中継用カメラの前に立ったためだ。会見場はどっと笑いに包まれた。

 両首脳が散策中に橋のテラスに座り、2人きりで話すシーンでも北朝鮮カメラマンが至近距離から撮影を続けた。金正恩氏が苦笑しながら手で後ろに下がるよう促しても食い下がり、韓国人らしきカメラマンに「離れた方がいいよ」という風に袖を引かれる始末。ここでも爆笑が起きた。

 北朝鮮で「1号写真」と称される最高指導者のベストショットを撮ろうと必死だったのだろう。ただ、世界に中継するためのレンズを遮っ
てしまっては自国の恥ともなりかねない。北朝鮮記者団には他の報道陣と撮影ポイントを譲り合う経験は皆無だったに違いない。帰還後、カメラマンが厳罰に処されなかったことを祈りたい。(桜井紀雄)
https://www.sankei.com/column/news/180509/clm1805090004-n1.html