――軍事研究家・塩原逸郎が緊急寄稿!

 平昌五輪が終わり、再び緊張状態に至ると思われた北朝鮮情勢であるが、北朝鮮の巧みな外交政策が功を奏したのか、依然として融和ム
ードを維持したままである。4月27日には南北首脳会談が予定され、5月中には米朝首脳会談が行われると推測される。

 このまま北朝鮮の核・ミサイル危機は終わりを迎えるのであろうか? 筆者の答えは「否」である。むしろ、日本にとり最悪の状況に陥る
可能性が高いと分析する。それは、金正恩が20日に発表した「核・ICBM実験の凍結」から読み解く事が可能だ。

 まず、核実験の凍結であるが、北朝鮮は2017年9月の段階で160キロトンもの威力の水爆実験に成功している。更に実験を重ねなくとも、
北朝鮮が既に周辺諸国にとり重大な脅威となりうる核戦力を有している事になんら変わりは無いのである。


■核実験凍結の2つの重要な意味とは?

 ICBM実験の凍結に関しても同様の事が言える。ICBMとは射程5500km以上の弾道ミサイルの事を指し、現在北朝鮮が保有しているのは射
程1万km超の火星14と、射程1万3000kmの火星15の2種類のみである。この2種のミサイルは今年2月に行われた軍事パレードで、前者が3基、
後者が4基登場した。これは両ミサイルが共に量産体制に入っている事を意味する。
ミサイルもまた、更に実験を重ねずとも十分脅威となる戦力を維持し続けられるというわけだ。

 ICBM実験の凍結からは、別の側面も読み解ける。それは、北朝鮮が米国にとって脅威となる戦力のみを材料に、トランプ政権に直
接取引を持ちかける可能性だ。北朝鮮の保有するICBM2種のうち、火星14は米西海岸を射程に収め、火星15は東海岸、NYやワシントン
を射程に収める。すなわち、ICBM発射実験の凍結は、アメリカ本土に脅威となるミサ
イルの発射実験凍結を意味するのであり、米朝首脳会談を念頭に直接取引を持ちかけるべく、北朝鮮がアメリカに向けて発信したメッセージと読み解く事が可能なのだ。

 これが実現し、仮に金正恩とトランプの間で、北朝鮮がICBMを放棄する代わりに北朝鮮の政権を存続させる事を確約する取引が行われたらどうなるだろうか?

■日本が核を運用する日が近い?

 日本は日米同盟を頼りにできないまま、ノドンをはじめとするICBMより射程の短い弾道ミサイルと核の脅威に晒され続ける事になる
。こうした悪夢のようなシナリオも十分に考えられるのが、現在の北朝鮮情勢なのだ。

 日米同盟が頼りにならないという最悪の事態をどう回避すべきであろうか?

 答えは核シェアである。日本国内にアメリカの戦術核を配備し、その戦力を航空自衛隊が運用しアメリカの核抑止の一端を担えば、
日米間の離反は回避できる。核シェアはNATO諸国において行われており、現在ドイツ、オランダ、ベルギー、イタリア、トルコの5カ
国にはアメリカ製のB61戦術核爆弾が配備され、トーネードやF-16といった戦闘機に搭載する事で運用がなされている。

http://tocana.jp/2018/04/post_16713_entry_2.html