音楽業界はApple MusicやSpotifyなど、先にサブスクリプションサービス(定額制サービス)の波がきたということもあって、そのバランスが業界全体で取れつつあり
ます。あと、そもそも音楽と映画には、デジタルで得られる体験より上位の体験があるんですよね。

??上位の体験とは?

音楽だとライブに行くこと、映画だと映画館で観ることです。デジタルでは代替できないものですね。

例えば、音楽を無料に近い状態で多くの人に聴かれたとしても、その中でファンになってくれた人がライブに来たりファンクラブに入ったりしてくれる。そこで対価が
支払われて、アーティストにしっかり還元されるという形ができています。

映画もそうです。映画館に行くということは、Netflixでは代替できない経験で、映画館にも3Dや4DXみたいなプラスアルファの価値が付いてきている。音楽、映画、ど
ちらも上位の価値というものが担保されていて、そこでしっかりクリエイターへの利益還元ができる。

一方で漫画の場合は、「紙で読む」ことが一つの上位体験としてありますが、映画と音楽に比べると少し弱いんですよね。だから、破格の定額制サービスで全ての出版
社の漫画が読めるようになってしまうと、対称性が取れないんです。(略)

??海賊版サイト問題についての議論が進む中で、講談社や集英社、小学館など日本の出版社が手を組んでサービスを作るべきではという指摘もあります。

これはあくまで僕個人の意見ですが、海賊版サイトには厳正に対処しつつ、一方で作家への還元が担保される形になるのであれば、出版社横断のサービスができるのは
いいことだと思います。

漫画家の赤松健先生が立ち上げた「マンガ図書館Z」は、無料で絶版になった漫画を楽しめる代わりに「広告が表示される」という仕組みで成り立っています。これには
作家も読者も出版社もみんな納得がいきます。

非常にいい線引きだなと思っているのですが、同様に、定額制読み放題サービスに関しても「ユーザーが納得できて作家の利益も担保できる」という線引きができるの
では、と思います。その感覚を漫画家・出版社・ユーザーの間に醸成できれば、大規模な漫画のサブスクリプションサービスを作ることも可能ではないかと思います。
http://www.huffingtonpost.jp/2018/02/28/comic-days_a_23372877/