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 だしは昆布とカツオで毎回取り、シューマイのタネは手作り、食材は有機野菜などこだわりのもの――。

 弁当店「うめめし本舗」は中央区月島4丁目の民家の一角にある。経営する梅木容さん(61)が「生涯現役で社会とつながりたい」と思って、たどり着いた場所だ。

 結局、新聞の求人広告で見つけた編集アシスタントのアルバイトを出版社で始めた。取材や編集の仕事は面白く、フリーの編集者として約30年間、業務委託を受けた子ども向け月刊誌などを担当した。

 転機は50歳のころ。出版不況で月刊誌が休刊になり、別の出版社などで働きながら自問自答した。「ずっと働ける仕事って何だろう」。答えは、弁当店だった。

 料理が好きで、編集業の傍ら中央区内で高齢者に弁当を作って届けるボランティアに10年ほど携わってきた。弁当を食べた相手が「やっぱり手作りはおいしいね」と見せる笑顔が好きだった。手料理の力を実感していた。

 2012年8月にボランティア仲間と2人で9坪の民家を改修して開店。当初は友人らを対象に週1回20食ほどの仕出し弁当から始めた。料理は独学で商売は初心者でも、「なんとかなると思って。私、血液型がB型なのでマイペースなのかな」と笑う。

 注文は、口コミなどで少しずつ増加。特に店の周辺は、タワーマンションで暮らす子育て世代が増えているため、子どもに安心して食べさせられる総菜は親子同士のパーティーのケータリングに人気で、働くママが仕事帰りに買って帰る需要も高い。

 近くの病院の売店に卸すなど、固定客もついてきた。今ではパートの女性たちを雇って週5〜6日、5種類ほどの弁当を100食近く作り、配達や店頭販売を行っている。

 価格は800円前後で、自分が食べたい「普通」の弁当を作る。「総菜の味や栄養バランスなどを足し引きして考えるのは、雑誌の紙面構成を考えることに似ている」と感じている。

 17年には大手との取引を想定して、梅木さんを社長に株式会社化した。現在、営業日は午前4時ごろに起きて弁当作りを始める。「お客様に必要とされているからこその忙しさ。自分の好きなことは続けられる」

 (京谷奈帆子)