陸上自衛隊が3月から導入する新しい制服が、全隊員への配布を終えるまで約10年かかることが19日、分かった。
15万人分を一括でそろえられるだけの予算確保や生地の調達ができないためだが、陸自隊員には時間がかかりすぎることへの不満や士気の低下への懸念が広がっている。
自民党国防族も問題視しており、防衛省に調達計画を前倒しして配布期間を短縮するよう求めている。複数の関係者が明らかにした。

陸自は平成3年度末から採用している緑色を基調とした現制服のデザインを一新し、来月から紫色を基調とした新制服を順次、導入する。
このため29年度予算に約42億円、30年度予算案にも30億円規模の調達費を計上した。

計画では、約15万人の隊員に配布する2着のうち、1着目の配布が完了するのは35年度、2着目は39年度となる見通しだ。
陸自幹部は「配布が後回しとなる隊員は『自分たちの任務は重要でないのか』と士気が落ちてしまう」と懸念する。

階級の高い自衛官から配布する案もあるが、その場合は同じ部隊内に新旧の制服が混在する可能性が生じる。
陸自関係者は「例えばテロ対策の任務に当たるとき、敵と味方の区別がつきにくくなる問題も起きかねない」と語る。

自民党国防族からも「10年は時間がかかりすぎだ」との声が相次ぎ、昨年12月に調達計画の短縮を求め、防衛省側は前向きに検討する姿勢を示したという。
国防族の一人は「有事で命をかける自衛官に失礼だ。遅くとも5年程度でそろえるべきだ」と指摘する。

陸自出身の佐藤正久外務副大臣は取材に「派手な装備品の調達ばかりに目がいくが、国防は最後は『人』だ。隊員募集の観点からも制服を含めた隊員の処遇に力を入れるべきだ」と強調した。

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