http://www.nishinippon.co.jp/nnp/oita_serialization/article/385994/

 午前4時17分に柳ケ浦駅(宇佐市)を出発した、JR日豊線の門司港行き普通列車。
全国JR旅客6社で最も出発が早い「日本一早い始発列車」は、20分後には県境を越え福岡県に入った。

 女性(40)は宇島駅(福岡県豊前市)で列車を待った。勤務先のスナックで仕事を終えたばかり。
自宅最寄りの行橋駅(同行橋市)まで乗る。午前4時44分。乗車すると、窓際の席に浅く腰掛け、スマートフォンの画面に指を走らせる。

 「今日はお客さん、楽しそうだったね」「明日の予約は誰だっけ?」。メッセージの送り先はママ。インターネットは便利だ。
店を出ても打ち合わせができるし、下車する駅までの26分間があっという間になる。

 前は車通勤だったけど、買い替えて納車待ち。列車も悪くない。飲酒運転にならないからお酒が飲めるし、時刻通りに走るし。

 店に定休日はない。自分もほとんど休みは取らない。午前7時台に寝て、同10時ごろに起きる。
それから家事をしたり、お客さんにお礼のメールを打ったり。そして午後6時台に出勤する。働きづめの1年はあっという間。今年もそんな生活が続くのだろう。

 「まあ、変わらないのが、いいのかもしれないね」。何も見えない車窓に目をやり、つぶやいてみる。一駅一駅をしっかり進む列車と、自分の日常を重ねた。