星野さんを取材し始めたのは中日での第一次監督時代だった。血気盛んな頃だ。
容赦なく殴った。コンプライアンスやパワハラがSNS上で大問題にされる現在ならどうなっていたのだろう。ベンチ裏、ロッカーで“生臭い異音”を聞いた人は数知れず。
“レジェンド”山本昌も殴られた。捕手の中村武志(現韓国起亜タイガースコーチ)は負けた試合では、ほとんど毎日のように鉄拳を食らわされていた。
今は、追手門大学の監督をしている小島弘務が血だらけになった口元をタオルで押さえて移動バスに乗り込んだ姿は鮮烈に覚えている。
「逃げるな」。殴られる理由は決まっていた。勝負を逃げての四球や被弾を嫌う。
躊躇や引きさがっての失敗、無難、怠慢、単純なサインミスなど、次につながらないミスは、どんな小さなものでも許さなかった。
「選手ができないのはコーチの教育が悪いせいだ」
円陣を組ませ全員の前でコーチまで殴った。
星野さんの中日監督時代は、時折、球場に報道陣立ち入り禁止の“仙のカーテン”を敷き、広報は「サインプレーの確認のため」と弁明したが、中では血生臭いチームの引き締めが行われていた。
(以下略)
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