米国ニューヨークの国連本部で、トランプ米大統領が19日、就任後初めて国連総会の一般討論演説を行い、もし北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る事態となれば「北朝鮮は完全に破壊される」と警告。
横田めぐみさん=失踪当時(13)=の拉致事件にも触れ「北朝鮮は凄まじい人権侵害を行っている」と非難した。
米大統領の国連演説は、日本上空を通過する弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮への力強い牽制になったはずだ。
米大統領が国連で日本人拉致問題に言及するのは異例で、日本にとっても意義深い。産経新聞によると、横田めぐみさんの母、早紀江さん(81)は「トランプ大統領が拉致問題にも思いを寄せ、発言してくださったことは大きな意味がある」と述べた。
安倍晋三首相とトランプ氏の良好な関係を受け、日本政府による水面下での働き掛けが功を奏した可能性もある。
北朝鮮の脅威は沖縄から見ても現実的だ。
沖縄本島には有事の際、米軍の活動拠点となると見られる米軍基地がある。
北朝鮮の人工衛星と称する弾道ミサイルは2012年と16年の2回、宮古、八重山諸島の上空を通過した。中山義隆石垣市長は直ちに北朝鮮に抗議したが、北朝鮮は馬耳東風だった。
北朝鮮との交渉を指す場合に使われる「対話と圧力」という言葉は常套句だが、日米は対話の積み重ねの果てに北朝鮮に裏切られてきた経緯がある。
「北朝鮮の破壊」という言葉は人を驚かせるが、実業家として「ディール(取り引き)」の重要性を強調してきたトランプ氏であれば、北朝鮮の核放棄に向けた交渉にあたり、さまざまな「口撃」を繰り出すのは当然のことだ。
現に国際社会で繰り広げられているのは国益と国益のぶつかり合いであり、日本としても、いかなる事態にも対応可能な即応性と柔軟性が求められる。
トランプ氏が国連改革に前向きな姿勢を示していることも評価できる。
トランプ氏は大統領就任前の昨年12月、国連について、ツイッターに「おしゃべりして楽しい時間を過ごす仲良しクラブ」と投稿。
大統領に就任後の4月に国連安全保障理事会メンバー国の国連大使らをホワイトハウスに招いた際、米国の国連拠出金の負担は「不公平だ」と不満を表明、批判を繰り返した。
国連では、沖縄県民を「先住民」と認めるよう求める勧告が繰り返されたり、翁長雄志知事が欧州国連本部の人権理事会で「沖縄県民の自己決定権がないがしろにされている」と演説するなど、沖縄県民から見ても、首をかしげたくなるような事態が繰り返されている。
組織が一部の政治勢力に利用されているのではないかという疑惑を拭えない。
安全保障理事会の常任理事国が自ら国際秩序を乱す行動を取るなど、国連の存在意義そのものが問われるような状況も出現している。
国連本来の理想である平和維持や人権擁護の機能が十分に発揮されているとは言い難い。その意味で、米大統領の発言は良識を反映している。
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