中核派 過激組織の警戒を怠るな
大阪府警が広島県内の過激派「中核派」の拠点で逮捕した男が、昭和46年に警察官が殉職した渋谷暴動事件の殺人容疑などで指名手配していた活動家とみられている。
事実なら、その逃走劇は約46年に及ぶ。驚くべきは、この間、非公然アジトなどで潜伏を支援してきたとみられる中核派の組織力である。過激派への警戒を怠るわけにはいかない。
事件当時22歳だった男は、白髪頭となっていたという。昭和46年といえば、NHK総合テレビが全番組をカラー化し、小柳ルミ子が「わたしの城下町」を歌った年だ。沖縄返還はこの翌年である。男の風貌が変わっていたとしても無理はない。
男は逮捕時、証拠の隠滅を図り、取り調べには完全黙秘を貫いているというから、筋金入りの活動家であり続けたのだろう。
暴力革命を標榜(ひょうぼう)する中核派は、同じ革共同系の革マル派などと凄惨(せいさん)な内ゲバ事件を繰り返してきた。成田空港の反対運動などをめぐって関係者の襲撃や放火ゲリラを起こし、圧力釜爆弾の使用や迫撃弾を皇居に撃ち込むなど、テロの手口をエスカレートさせた。
過激な武装闘争路線は警察当局の厳しい取り締まりを受けて先細りとなり、近年は市民運動や労働組合への浸透を図り、より巧妙に運動を継続していたとされる。
機関誌やホームページには「共謀罪粉砕」「反原発」「基地撤去へ沖縄闘争」などの文言が並び、広範な活動を報告している。こうした運動体の表裏に過激派の姿があるのだろう。
彼らの主張は、現実離れしている。例えば、核実験やミサイル発射を繰り返して国際社会から孤立を深める北朝鮮情勢について、中核派の機関誌は「米日帝国主義の朝鮮侵略戦争が切迫する」と表現していた。
こうした時代錯誤的な主張を展開する集団と、いわゆる健全な市民運動家は、どう共通認識を持ちうるのか。何より彼らの本質は、殺人容疑の手配犯を、かくも長きにわたって組織的に隠しおおせる犯罪者集団である。
英マンチェスターのコンサート会場で22日、自爆テロにより多数が死傷するなど、世界でテロの嵐が吹き荒れている。国際テロへの備えに万全を期すとともに、国内の極左暴力集団の動向についても監視を強めるべきだろう。
http://www.sankei.com/affairs/news/170525/afr1705250002-n1.html