やむなく格闘…不運な殺し屋 伊坂幸太郎さん新作『777 トリプルセブン』
2023/9/26 12:00 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20230926-74LDC4UBEBMKTL2BYZYWSTGOUA/


「読者の予想をいつも裏切りたい。だから前の作品とこれだけ直結したシリーズ物を書くのは僕にとって挑戦でしたね」。伊坂幸太郎さん(52)の新しい長編小説『777 トリプルセブン』(KADOKAWA)は、非合法な裏の仕事をこなす物騒な腕利きが集う「殺し屋シリーズ」の第4弾。力点を巧みにずらす軽妙洒脱(しゃだつ)な語り口に乗せて、不思議な温かみのある活劇を立ち上げている。

通称「天道虫」と呼ばれる殺し屋・七尾が請け負ったのは、東京の高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「安全で簡単な仕事」。ところが、スロットマシンで「777」をそろえようにも<回そうとしたらレバーが壊れる>ようなとことんツキに見放された人生を送ってきた七尾は、トラブルに遭遇しホテルを出られない。同じころ、別の部屋には驚異的な記憶力を持つ女性が追手を逃れて身を潜めていた。人を解体する趣味があると噂される男。ハッキングにたけた逃がし屋。美男美女の6人組…。個性的な〝業者〟たちの思惑と駆け引きが交錯し、事態は二転三転していく。

七尾といえば、東北新幹線の車内を舞台にした活劇で、米ハリウッド映画になったシリーズ2作目『マリアビートル』での生き残り。この映画(「Bullet Train」)に主演した人気俳優の反応が執筆のきっかけになった。「ブラッド・ピットさんが天道虫役を気に入ってくれている、という話を聞いたんです。じゃあ七尾を主人公にした別の話を、という流れで…。『マリアビートル』は東京から盛岡への横の動き。今度は舞台をホテルにして移動を垂直方向にしたらどうだろう、と」

七尾はこわもてでも勇敢でもない、気弱な人間。厄介事が降りかかるから仕方なく格闘する羽目になる。「殺し屋」に対して抱きがちな先入観との絶妙なギャップが物語におかしみとリアリティーを添える。


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