4/4(火) 16:12配信

産経新聞
ドジャースタジアムに設置されている「ピッチクロック」(撮影・水島啓輔)

開幕した今シーズンの米大リーグ(MLB)で、ルール変更によって大きな異変≠ェ起きている。今季から投球間に時間制限を導入した「ピッチクロック」によって、試合時間は大幅に短縮。また、一〜三塁ベースが昨年よりもサイズが大きくなり、塁間が縮小されたことで盗塁が成功するケースが増えている。将来的には日本のプロ野球にも一連のルール変更が波及する可能性もあるだけに、今季のMLBでの戦いぶりは今後も注目されそうだ。

【写真で比較】今季から導入された18インチ四方のベースと、昨年までの15インチ四方のベース

■試合時間の短縮は「MLBにとって重要なテーマ」

ピッチクロックは、走者なしで15秒以内、走者がいる場面は20秒以内に投球動作に入る必要があり、時間を超過すると「ボール」が宣告される。打者もタイマー表示で残り8秒までの間に打席での準備を整えなければ「ストライク」が宣告される。

マイナーリーグでは2021年から試験的にピッチクロックをスタートさせ、MLBでは今年の春季トレーニングでのオープン戦から導入。野球専門誌「ベースボール・アメリカ」(電子版)によると、試合時間は昨年と比べて26分短縮されたという。

MLBの公式サイトによると、開幕戦の15試合でピッチクロックの違反を指摘されたケースは14件あった。AP通信によると、今季の開幕カード3試合の平均試合時間は2時間38分で、昨シーズンの平均試合時間に比べ30分も早かった。

大リーグ評論家の福島良一氏は「MLBでは試合時間の長さが人気低迷の一因と認識されており、試合時間の短縮はMLBにとって重要なテーマだった」とした上で、「ピッチクロックの導入が、試合時間の短縮に大きく影響している」と指摘する。

■塁間は約11センチ縮小、盗塁成功数も増加

今季からは、攻撃面でも注目されるルール変更がある。MLBでは今シーズンから、一〜三塁ベースのサイズが15インチ(約38センチ)四方から18インチ(約46センチ)四方へと大きくなった。ベースが拡大したことで、一塁から二塁、二塁から三塁の塁間はそれぞれ4・5インチ(約11センチ)縮まり、各チームの盗塁が成功するケースが目立っている。

AP通信によると、開幕戦での盗塁成功数は昨季の5回(企図9回)から21回(同23回)と大幅に増加。MLBの公式サイトは「盗塁は現代のMLBでは(戦術として)迷走していたが、ベースの拡大によって盗塁(という戦術)を復活させる方法になるだろう」として、今季はさらに盗塁するケースが増えると予想した。

米国の大手紙「ニューヨーク・タイムズ」(電子版)は「野球は新しい時代に適応する」との見出しで、MLBでの一連のルール変更について特集記事を掲載。「ピッチクロックやベースの拡大などの一連の変更によって、MLBが望んでいたゲームを自然なリズムに戻すことが達成されている」と指摘した。

福島氏は「MLBはファンに対して『いかにいいゲームを提供するか』ということを、ルールにおいても常に意識している」とした上で、「1990年代後半からは本塁打重視の攻撃が主流となっていたが、野球におけるパワーとスピードのバランスを是正する意味でも、(ベースの巨大化は)有意義なルール変更だと思う」と話している。(浅野英介)

https://news.yahoo.co.jp/articles/49c17a3a7e5c39691de96ee2afe2f8bc5a985183

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