エンカウント2023.03.25
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ネット上では「有名な芸能人なら楽勝でしょ」などの書き込みもあるが、取材によると、今年の入試でも志望校に合格できなかった人気タレント、アイドルが多数いた。これまで多数の芸能人を合格させている教育研修会社ホープス(東京・代々木)の指導者・中田早苗さんも「AO入試は決して芸能人有利の選考ではありません」と断言する。

「AO入試は一般の生徒たちも多く受験します。昨今は学業にも主眼を置く方針へと変わってきているため、成績はもちろん、どんな資格を持っていて、どんなボランティア活動をしてきたのか、学校での生活態度やリーダーシップ、協調性も重視されます。そのため、出席日数が少ない芸能人は、それを補うだけのアピール材料がないと不利になります。何より大学側は、『4年間の学校生活で何を得たいと思って受験しているのか』を厳しくチェックしていますので、最初から4年で卒業する意志のない人は選考対象外と見なされます」

本田が合格した早稲田大社会科学部のAO入試は、志望者297人で合格者37人。難関大の入試倍率は軒並み高く、実は芸能人の不合格者も多数。1次選考を通過しても、面接で不合格になるケースがあるという。

「有名になればなるほど、芸能人の状況をよく知る先生が面接官を担当することがあります。ある男性アイドルは『コンサートやドラマやCMの撮影がたくさんある中で、本当に授業に出席できますか。4年で卒業できますか』と質問をされて回答に困り、不合格になりました。一概にタレントという肩書きが有利に働くとは言えなくなってきました」

小論文も容易ではない。2015年、上智大総合グローバル学部AO入試を受験した有名モデルが試験当日に出されたテーマは、「感染症が広がったときにあなたが知事だったらどうするか、限界や困難を具体的に示して述べなさい」だった。彼女は高3の夏からホープスで国際問題を学び、エボラ出血熱に関する知識を得ていた上、小論文指導を受けていたことで対応できたという。結果は合格。一般受験と比べると準備期間は長くはないが、直前になって父兄と相談に来る芸能人もいる。

「高2から準備を始める人もいれば、受験の2か月前に駆け込みで相談が来るケースもあります。最初に『○○大を受けたい』という相談があり、志望校に行けるかどうかを総合的に判断します。例えば本当に意中の大学なのか、自分の目で確かめてもらうため、OBの芸能人と一緒にオープンキャンパスに行ってもらうこともあります。さすがに2か月前では、できることは限られているので得意分野を伸ばす学習に切り替えてもらい、エントリーシートの精度を徹底的に上げてもらうことに力を入れます」

昨年は駆け込みで相談に来た3人の男性芸能人のうち、2人が合格したという。

「もっとスタートが早ければ、さらに上位校を目指せたと思います。芸能人はもともと学業と仕事の両立をしているので、スイッチの切り替えがとても上手です。そして、目標達成に向けての集中力もあるので頭の回転の速い人が多いんです。分からないことを質問する頻度も、一般の生徒とは違います。これはあくまで私見ですが、第一線で活躍している芸能人は比較的チャンスに強い印象があります。例えば面接の最後に『何か言いたいことはありますか』と聞かれたとき、とっさの判断で場の空気を読んだり、面接官の心をつかむような言葉を残したり、そこでタレント性が発揮されるケースも多いと聞きます」

その状況下でも上位校に合格する芸能人は受験のテクニックだけに頼らず、多忙でも学習の手を抜かないという。

「ある男性アイドルは仕事を終えた深夜0時から勉強を始めて、分からないところは真夜中でも担当の指導員に質問をぶつけ、その場で解決していきます。また、ホテルに泊まって論文の練習をしたり、実際には見えない努力をたくさん積み重ねてきた人が合格しています」

■芸能事務所に変化…社長が「社会人として立派になるため大学に」
そして、近年は芸能事務所の方針にも変化が起きている。

「現在、ドラマの主役やCMにもたくさん出演している女性タレントが過去にAO入試を受けた際、所属事務所の社長が、『この子は芸能人としてだけでなく、社会人として立派になってほしいので大学に行かせたい』と直々に熱意の伝わる推薦書を書いてくださいました。ひと昔前は芸能活動に支障が出るという理由で進学に後ろ向きな事務所も多かったのですが、最近は本人の将来を考えてAO入試を勧める事務所も増えています」

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