日本の優勝で幕を閉じた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。振り返ると、1次ラウンド(R)のグループ分けに対して不公平さを感じる声が多くあがっていた。

D組は「死の組」と呼ばれ、第3回大会優勝のドミニカ共和国、2大会連続準優勝のプエルトリコ、第2回大会3位のベネズエラが入り、強豪国の1チームは脱落しなければならなかった。メジャーのスター軍団がそろう実力国のつぶし合いは、優勝候補ドミニカ共和国が涙をのんだ。台湾ラウンドのA組は全5チームが2勝2敗で並ぶ大混戦だった。

一方、B組の日本は、C組の米国とともに対戦国に恵まれた印象。C組の米国は2戦目のメキシコに敗れてつまずいたが、後がなくなってから調子を上げていった。B組の日本は結果的に大勝続きだったが、接戦の展開がないまま迎えた準決勝から対戦相手のレベルが一気に上がり、苦戦を強いられた側面もあった。

公式ルールによると、グループ分けには以下の基準がある。
①A~D組の開催地と開催国割り当て
②前回大会ベスト4の振り分け
③世界野球ソフトボール連盟の世界ランキング順で割り当て(商業面や地域性なども考慮)
④予選ラウンドを勝ち上がった4チームの振り分け

最大の問題点は、メジャーリーグ(MLB)と選手会が共同で立ち上げた組織のWBCIが大会を主催し、「密室」でグループ分けしていることではないか。基準は示されても、③の「商業面」や「地域性」を理由に組み合わせをいかようにも操作でき、それらの情報は開示されない。

基準③にある世界ランキングという点でみると、2022年末の時点で日本が1位。ランク決めには、トップチームだけでなくU-12以上のカテゴリーの成績も反映される。強豪国のドミニカ共和国が9位、プエルトリコが13位と順位が低いのは、メジャーリーガー育成を最優先し、アンダー世代の大会には重きを置いていないという背景がある。

とはいえ、世界ランキングもグループ分けの参考にはなっている。たとえば、サッカーW杯のように、ランキング上位から参加国を「ポット」順に分けた場合、WBCではどうなるだろうか。

◆WBC参加国の世界ランキングと今大会成績
()内は1次ラウンドのグループ

【第1ポット】
1位(B)日本 優勝
2位(A)台湾 1次敗退
3位(C)米国 準優勝
4位(B)韓国 1次敗退

【第2ポット】
5位(C)メキシコ 4強
6位(D)ベネズエラ8位
7位(A)オランダ 1次敗退
8位(A)キューバ 4強

【第3ポット】
9位(D)ドミニカ共和国 1次敗退
10位(B)オーストラリア 8強
11位(C)コロンビア   1次敗退
13位(D)プエルトリコ  8強

【第4ポット】
14位(C)カナダ   1次敗退
16位(A)イタリア  8強
20位(D)イスラエル 1次敗退
30位(B)中国   1次敗退

【第5ポット(予選通過国)】
12位(A)パナマ  1次敗退
15位(B)チェコ  1次敗退
17位(D)ニカラグア1次敗退
22位(C)イギリス 1次敗退

 仮に抽選方式にした場合、日本は第2ポットのメキシコやベネズエラ、第3ポットのドミニカ共和国やプエルトリコと当たる可能性がある。「死の組」入りは避けられそうにないが、これまでのようなアジア勢中心でなく、対戦機会が少ない中南米国との真剣勝負が増えれば、ファンの楽しみも広がり、興行的にも盛り上がりが期待できる。

 グループ分けの基準は大会ごとに見直しされているものの、「米国が決勝まで強豪と当たらないシステム」とSNSでよく言われるように、公平性が担保されないことへの批判は後を絶たない。今大会でも、前代未聞の「大会途中のルール変更」があった。大会前は日本、米国とも、1次ラウンドの順位にかかわらず、準決勝に進めば対戦するはずだったが、決勝トーナメント前に急きょ対戦カード変更が発表された。主催者のあからさまな「米国有利」操作と指摘されるなど、非難が集中した。

 そうでなくても、準決勝と決勝は必ず米国開催。米国の試合を自国の審判が裁くなど、他競技の国際大会ではありえない運用がまかり通っているのも、WBCの特徴であり、課題でもある。実際は、国際審判を派遣できるような環境が整わない国も多く、WBC開催時期がシーズン開幕直前で調整を考慮しないといけない事情もあり、MLB主導から脱却するのは簡単ではない。ただ本当の意味で野球の世界一を決める大会にするために、サッカーW杯のようにグループ分けの公開抽選を行うなど、発展への議論は必要だろう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]2023/3/26
https://cocokara-next.com/athlete_celeb/wbc-feeling-unfair/