日刊ゲンダイ2022/10/30 12:08
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/313647

「ドラフト候補」といわれながら、指名されなかった選手が毎年のように出る。いわゆる「指名漏れ」だ。

ドラフト大成功はオリックス、最も残念だった球団は…“流しのブルペン捕手”が徹底採点

 今年は、メディアに「上位候補」といわれていた立教大の山田健太内野手がいい例さ。大阪桐蔭時代は根尾(中日)や藤原(ロッテ)とともに甲子園の春夏連覇に貢献。大学では全日本の4番を打ったように、パンチ力があって、なおかつリーグ戦の通算打率が約3割。ミート力もある二塁手だ。

■「守備範囲が狭く、足も…」

 部長は「守備範囲が狭くて、内野手の割に足もいまひとつ。それに……」なんて言葉を濁してたけれど、ウチ以外の球団も指名を見送ったわけで、なんかキズがあるんだろうな。ま、オレはいい選手だと思ったんだけど(苦笑)。

 それより何より、たまげたのが、プロ志望届を出しながら、何位以下ならプロに行かないって選手が例年以上に多かったことだ。例えば3位以下なら社会人に行くって選手をオレたちは「2位縛り」って呼ぶ。

■「2位縛りなら、どうぞ社会人へ」

 本来はそれなりの実力があって、すでに社会人に受け皿が用意されている選手が対象で、例年は2、3人くらい。それでもプロが「2位縛り」の選手を強引に4位くらいで指名して、プロ入りする、しないでスッタモンダするケースがあるんだけど、今年は例年以上に縛りをかけた選手が多かったんでビックリさ。

 オレが聞いているだけでも六大学の左腕がそうだし、関西の大学生は5、6人、西の方の高校生までが〇位以下なら社会人って言ってたらしい。

 さらに驚いたのは、そうやって何位以下なら社会人ってタンカを切った連中を、プロがだれひとりとして指名しなかったことだ。

 プロにとって社会人とのパイプはもちろん大切だが、何が何でも欲しければ「2位縛り」の選手を4位とか5位で指名することだってある。それすらしなかったのは、プロが「2位縛りなら、どうぞ社会人へ行ってください」と判断したということさ。

「プライドが高くて自身を過大評価してる選手も中にはいるんだろうが……」と、部長はこう言った。

「社会人が早い時期から素材の良い大学生に目を付けていて、さっさと内定を出したんだろう。だれもが認める実力の持ち主ならプロ一本に絞れるけど、コロナ禍で練習が制限され、春先の時点で結果を出した選手はそう多くない。社会人に決めておいて、あわよくばプロも……という連中が多かったということじゃねーか」

 ともあれ、例えば2位縛りの選手を4位で指名した際の担当スカウトは大変さ。オレは食らい付いたら離さない、なんて言われてるようだけど、ややこしい仕事をせずに済んだのは救いだね。

(プロ野球覆面スカウト)