日本随一のサッカーどころとして知られてきた静岡県が大変なことになっている。J1ではタイトル獲得歴もある清水と磐田がJ2降格の危機に瀕し、国内トップリーグから初めて静岡県勢が消える事態も現実味を帯びる。11月開幕のワールドカップ(W杯)カタール大会は日本代表に静岡県出身者のいない初の大会になる可能性があり、ほしいままにしてきたサッカー王国の地位は風前の灯火だ。

ともに12試合を残すJ1で清水は17位、磐田は最下位の18位とそろってJ2自動降格圏内に沈んでいる。J1残留を確定させる15位との勝ち点差はそれぞれ1と2でさほど大きくはないものの、ダブル降格も十分に考えられる状況だ。今季のJ2に静岡県勢は参戦しておらず、清水と磐田がJ2に降格すると、来季は1993年のJリーグ元年以降で初めて、国内トップリーグから静岡県勢が消えるシーズンとなる。

清水と磐田はかつて、Jリーグを代表する強豪だった。Jリーグ元年以降、「オリジナル10」の清水は天皇杯とリーグ杯を各1度制し、94年がJリーグ初参戦の磐田はリーグ3度、天皇杯1度、リーグ杯2度のタイトル獲得歴を誇る。2ステージ制だった99年には第1ステージを磐田、第2ステージを清水が制し、年間王者を懸けてチャンピオンシップも争った。

しかし、近年は振るわない。磐田は2013年シーズン後に初めてJ2降格を経験した。15年シーズン後にJ1へ復帰したが、入れ替わるようにして清水がJ2へ降格。清水が1年でJ1へ復帰後、磐田は19年シーズン後に再びJ2へ降格し、今季にJ1へ戻ってきた。紙一重のところで国内トップリーグから静岡県勢が消える事態は回避してきたが、両クラブとも毎年のようにJ2降格争いに巻き込まれている。

静岡県勢の退潮は日本代表の顔触れにも表れている。日本は初めてW杯を戦った1998年フランスW杯からカタールW杯まで7大会連続出場。前回2018年ロシアW杯まで、日本代表の中心には静岡県出身者がいるのが常だった。

フランスW杯で唯一の得点を挙げた旧・岡部町(現・藤枝市)出身の中山雅史氏、フランスW杯から10年南アフリカW杯まで4大会連続で代表に選ばれた富士市出身の川口能活氏、南アフリカW杯からロシアW杯まで3大会連続で主将を務めた藤枝市出身の長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)らも静岡県出身者のほんの一部にすぎない。

しかし、カタールW杯に臨む現在の日本代表において、絶対的な地位を築いている静岡県出身者はいない。国内最強の川崎で背番号10を担う旧・清水市(現・静岡市)出身の大島僚太はロシアW杯を経験して29歳の全盛期で臨むはずだったが、故障を繰り返して選出は絶望的。6月の代表活動で初招集されて存在感を示した浜松市出身の伊藤洋輝(シュツットガルト)が、静岡県勢の希望となっている状況だ。

サッカー王国の系譜をつなぐという意味でも注目を集めることになった伊藤は、「静岡県出身だからという意識はない」と意に介した様子はなかった。ただ、国内トップリーグから静岡県勢が、W杯日本代表から静岡県出身者が姿を消すようなことになれば、2022年は日本サッカー史に残る1年となりかねない。

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