JBpress2022.6.15(水)小林 偉:放送作家・大学講師
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70557

●「I WILL ALWAYS LOVE YOU / WHITNEY HOUSTON」
結婚披露宴では本当によく選曲されています。しかも、新郎新婦の馴れ初めを構成したビデオのBGMの“ここぞ”っていう時にかかったり・・・しかしこの曲、実は恋人同士の別れを歌ったもの。簡単に歌詞を翻訳してみると・・・

「このまま貴方のそばにいても、私は邪魔にしかならない。だから行くわ。でも分かってる。これからどんな道を歩んでも、貴方のことを想っている。私は貴方のことをずっと愛し続けるって(=And I Will Always Love You)」という具合。

言うまでもなく、結婚披露宴という場では、ご法度ナンバーです。

ちなみにこの曲、いまやホイットニー・ヒューストンの代名詞みたいな感じになっていますけれど、実はカバーソング。オリジナルはカントリー界の大御所女性シンガー、ドリー・パートンが1973年にリリースしたもので、『テキサスの赤いバラ』という映画の劇中歌でした。

カントリーの曲を、バリバリのソウルシンガーであるホイットニーがカバーしているのも凄いことですが、ホイットニー・ヴァージョンも映画『ボディガード』の主題歌だったというのも、面白いですよね。

●「SAVING ALL MY LOVE FOR YOU / WHITNEY HOUSTON」

「すべてをあなたに」という邦題がつけられたこの曲も、結婚披露宴では定番化している感が強く、筆者は何度も会場で耳にしています。

これは1985年にリリースされた、ホイットニーのデビューアルバムに収録されたもので、シングルとしても大ヒットを記録している、名バラードナンバーですが・・・こちらの歌詞を冒頭から訳してみますと・・・

「人目を盗んで逢う時だけが、私たちの時間。でも、貴方には大切な家族がいる」

・・・ン? いきなり来ましたねぇ・・・さらに訳していくと・・・

「貴方の優先リストの最後にならないよう努力はした。どうしても他の男じゃダメなの。だから、私の愛は全て貴方のために取っておくわ(=Saving All My Love For You)。一人でいるのは楽じゃない。友達は“自分だけの男を作れ”って言うけど、そうしようとするたび、泣いてしまう。そんなことなら、一人でいる方がマシ」

※長文の為一部略

「貴方は“駆け落ちしよう。愛はいつだって、君を自由にするから。もう少しだけ待っていてくれ”って言っていたけど、それも古ぼけた幻想だった。さあ、もう用意しなきゃ。貴方が、あのドアから入ってきたら、あの感覚が戻って来る。今夜は二人だけのもの。一晩中、愛し合いましょう・・・」

 そして最後は・・・

「私ほど、貴方を愛している女はいない。だって、今夜も最高の気分じゃない。一晩中、愛し合いましょう。私の愛は全て、貴方のものだから」。

 ・・・と、もうお分かりいただけたと思いますが、不倫している女性の開き直りとも言える独白なんですねぇ・・・。

 最早、芸能人のみならず、広く一般にも流行している(?)道ならぬ恋愛ですけど、ここまで堂々と歌われると、ある意味、爽快(笑)。

 ですがコレ、間違っても結婚式で選曲したらダメですね。


●「EVERY BREATH YOU TAKE/THE POLICE」

「見つめていたい」という邦題もつけられた、ポリスの代表曲の一つですね。

 1983年に全米ヒットチャートで、実に8週連続の1位に輝いていますし、日本でもすっかりお馴染みの曲で、結婚披露宴でも頻繁に選曲されていると思います。

 この曲の歌詞は「君が息をするたび、君が動くたび、君が歩くたび・・・ずっと君を見つめているよ」という内容で、英語的には「Every ○○ You...ake」と、しつこいぐらいに韻を踏んでいるのが特徴でもあります。

 一聴する限りは、究極のラブソングですが、ちょっと見方を変えてみると・・・「コレって、ストーカー?」という空恐ろしさも感じませんか?

 事実、この曲の作者であるスティングは、とあるインタビューで・・・

「あの曲は、意地が悪く器量の狭い歌なんだ。本当にかなりタチが悪い。嫉妬と監視、独占欲についての歌だ」と発言。ポリス解散後には、ソロとして、この曲のアンサーソング「If You Love Somebody, Set Them Free」(直訳=誰かを愛するなら、相手を自由にさせろ)をリリースしているほどです。