26日に結婚する秋篠宮家の長女眞子さま(30)と小室圭さん(30)を巡り、ネット上で誹謗(ひぼう)中傷が渦巻いてきた。

眞子さまが「複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と診断されたことが明らかになっても、いまだ罵詈雑言(ばりぞうごん)が飛び交う。

自身もネット上で「殺人に関与した」などのデマや中傷に悩み苦しみ、啓発活動に取り組んできたお笑い芸人、スマイリーキクチさん(49)はこの事態をどうみるか。

 ◇ただただ、悲しい

 ――眞子さまと小室さんへの誹謗中傷が絶えません。どう受け止めていますか。

 ◆ただただ、悲しいです。「一億総いじめっ子」か。テレビ番組の出演を巡りSNS(ネット交流サービス)で中傷されたプロレスラーの木村花さん(当時22歳)が昨年5月に亡くなった後、国も民間も誹謗中傷について議論を深め、ネット上の人権に対しての意識が少しずつ高まっていると思っていました。でも、そうではなかった。誰もが加害者になり得るという意識が、まだまだ広がっていないように感じます。

 誹謗中傷に目を通すと、刑法で言えば名誉毀損(きそん)どころか脅迫にもあたるのではないか、という文言も目につきます。でも、そういう言葉を発する人も、「いいね」などをつけて承認する人も、全く犯罪の意識はないんでしょうね。

 匿名の誹謗中傷に対しては、プロバイダー責任制限法に基づいて発信者情報を開示請求するといった対抗手段があります。しかし、眞子さまや小室さんがそれをしてこないことをいいことに、たたくことをやめていない。刃向かわない人に対して凶暴になって、集団リンチ状態です。「ネットいじめをなくそう」とか子どもたちに呼び掛けている大人たちがこういう状態で、何を言えるのでしょうか。

 ――自身の被害を思い出すことはありますか。

 ◆中傷する人の「言い訳」を見ていると、僕のケースと同じ傾向があります。僕を凶悪犯と決めつけて罵詈雑言を浴びせた加害者たちは、自分のやっていることを「正義」だと信じて疑っていなかった。僕のケースが刑事事件化してもなお、「自分たちはデマに流された“被害者”だ」と主張していました。

 責任転嫁するのは今回のケースでも同じように思います。眞子さまが誹謗中傷を理由に病気を公表しても、さまざまな理由をつけて小室さんを「悪い人」と決めつけ、罵詈雑言を浴びせることを正当化しています。「悪い人だから、たたくことは正義」とでも思っているのではないでしょうか。でも、ここで言う「良い」「悪い」「正義」「正論」って、自己判断。ネットというツールは、そこに同調者を集めてしまう怖さがあると思います。

 ◇誹謗中傷を「負の遺産」に

 ――同調者が集まり承認されることで、中傷が過激化していくこともあります。

 ◆そうですね。中傷を繰り返す人は、人をたたくことに快楽を覚える、ある種の「依存状態」だと僕は思っています。よく「ネット中傷するなんて暇な人だな」と言う人がいますが、僕は自分の事件の加害者を見てきた経験から、暇だからではなく「やめられない」状態なんだと思います。そして、孤独。書き込もうとしている誹謗中傷について、もし周囲に話せる人がいたら書き込みを踏みとどまるだろうし、匿名で書き込まないのではないでしょうか。話せる人がいないから、ネット上での承認を求める。コロナ禍で対面でのやり取りが減り、そうした側面を加速させているように思えます。

 ――誹謗中傷を書き込む人に伝えたいことはありますか。

 ◆自身が発した言葉によって苦しむ人の姿を想像してほしい。自分の尺度でいくら「正しさ」を強調しても、ののしる時点でアウトです。

 社会から一人の人間を抹殺する権利なんて誰にもないのに、言葉がそれをなし得る。テクノロジーが発展し、全世界に誰もが言葉を発信できる今、誰もが「コメンテーター」です。フォロワー0だろうが、リツイート0だろうが、責任をもって書き込んでほしいと思っています。

 自分のような被害経験は、もう繰り返してほしくないです。誹謗中傷を「昔の大人ってこういう情けないことしていたね」と将来言えるような、負の遺産にしていきましょう。