読売新聞2021/10/20 17:00
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 第98回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝=読売新聞社共催)の予選会が23日、東京都立川市で開かれる。上位10校が来年1月の本大会に出場できる。1968年の第44回大会を最後に箱根路から遠ざかっている立教大(練習拠点=埼玉県新座市)は、大学創立から150周年となる2024年の箱根駅伝出場を目指し、駅伝チームの強化に取り組んでいる。上野裕一郎監督(36)が就任した18年当時の1年生が最上級生となり、チームの柱として今年の予選会に挑む。(さいたま市局・水野友晴)

■1年生時、不安の中で覚悟「俺らの代はやりきろう」
 「立教の駅伝部の監督に上野さんが来るってよ」

 ネットニュースを見た友人から伝えられ、あまりの衝撃に「自分の大学のこととは思わなかった」と、当時1年生の石鍋拓海主将(4年)は振り返る。

 18年秋。陸上競技部男子駅伝チームの指揮官に招かれた上野監督は、佐久長聖高(長野)時代から注目されていた。中央大で箱根駅伝に4年連続で出場し、3年生の時に3区で9人抜きの快走を見せて区間賞を獲得した。実業団でも活躍し、「スピードキング」の異名を持つ。

 石鍋主将は、「予選会に1回でも出られたらいいな」という気持ちで入部した。チームメートの斎藤俊輔選手(4年)は強豪校から声がかかったが、「陸上漬けの日々は嫌だった」と、練習が厳しくない立教大に一般受験で入った。

 エリートランナーの監督就任に、当時の1年生の間には練習を続けられるか不安が広がったが、「俺らの代はやりきってやろう」と全員で覚悟を決めた。

■選手目線で指導する指揮官、記録更新もアシスト
 上野監督は駅伝チームに厳しい練習を課す一方で、自身も30キロ走などで選手の後ろに付き、フォームを指導しながら走った。レースでは選手の先頭に立ち、記録更新をアシストすることもあった。石鍋主将は5000メートルの記録を高校時代から約2分縮めた。斎藤選手も昨年12月の記録会で5000メートルのチーム記録を更新し、「(上野監督は)選手と同じ目線に立ってくれた」と話す。

 選手たちの成長ぶりに、上野監督は「1年生は表情に自信がなく弱々しかったが、次第に自信が見えるようになった」と語る。20年には選手寮が完成。朝練習などに取り組みやすくなり、チームワークも強化している。

■中山凜斗や内田賢利ら登録選手は2年生中心、まとめ役は4年生
 大学を挙げての駅伝強化プロジェクトにより、全国の強豪校から優秀な選手が入部するようになった。実力のある選手は練習内容などに意見を言うこともあるが、上野監督は「石鍋が下級生の意見を聞きながら、チームをまとめている」と、その手腕を評価する。

 10月上旬、予選会に出場する選手が発表された。「強化世代」の2年生が中心で、今年1月の箱根駅伝に関東学生連合チームの一員として4区を走った中山凜斗選手や、6月の日本選手権で男子3000メートル障害に出場した内田賢利選手らが名を連ねる。4年生で選ばれたのは斎藤選手のみ。石鍋主将は「主将で入れないのは情けない」と話すが、「上級生を抑えて下級生が入ることは力がある証拠。自信を持ってチームを送り出せる」と胸を張る。

 上野監督は最上級生について、「彼らにとって私の就任は予想外の出来事にもかかわらず、ついてきてくれた。これまでチームを支えてくれたのは4年生たち」と話す。強化プロジェクトは24年の箱根駅伝出場が目標だが、石鍋主将は「今年狙いたい」と意気込む。斎藤選手は「これまで一緒にやってきた同期の分も背負う」と語り、予選会でチームを引っ張るつもりだ。