「日本の敗戦は見た」

 それがフィリップ・トルシエの第一声だった。日本がサウジアラビアに0対1で敗れたカタールW杯アジア最終予選第3節の試合終了直後、私たちは電話で話し合っていた。緒戦のオマーン戦に続き、接戦をモノにできなかった日本代表をトルシエはどう評価したのか。率直な意見を聞いた。

――試合をすべて見たのですか? 

「放映するテレビ局を見つけるのが難しく、アラブの放送を見たから幾つかのシーンは見られなかった。

 どうしてなのかわからないが、日本はコレクティブな面で敗れた。コレクティブなクオリティを欠いていた。内容も乏しかった。個の面でも技術的なミスが多く、選手の能力も見劣りがした。インテンシティも動きも質・量ともに不十分で、試合の重圧があったのかも知れないが、これまで日本が作りあげてきたDNAがこの試合では何も感じられなかった。

 たしかに大迫はチャンスを2度作り出し、これだけ出来の悪い試合でも、前半の日本は2点入れていてもおかしくはなかった。サッカーはそうした効率のディテールで勝負が決まるが、私の最大の失望は日本がまったくコレクティブでなかったことだ。本当に何もなかった。プランも戦略も感じられなかった。最後の十数分を除き、ゴール前に積極的に侵入することもなかった。しかしサッカーでは、終盤はだいたいそんな風にグチャグチャになる。

 才能を欠く選手たちが自分たちの本性に反するサッカーをした。このチームに才能は感じられない。何かができるとしたらコレクティブになったときだけだが、それもなかったから個人では何もできなかった。ゴール前への侵入もなく誰も違いを作り出せなかった」

――その通りでした。

時間がないのは言い訳にならない
「サウジアラビアも決して良くはなかった。彼らの出来もまたごく平凡だった。サウジも大きなプレッシャーを受けて、緊張していたのかも知れないが」

――しかし日本よりもコレクティブで規律もあったのは明らかではないですか。

「ディシプリンがあったのは間違いない。それはマネジメントの効果だろう。私は監督のエルベ・ルナールをよく知っている。彼は規律に溢れ、組織的にチームを構築する。

 日本は自分たちの経験を生かそうとした。経験に溢れた選手を揃えたが、インテンシティを欠き野心も感じられなかった。どうしても勝ちたいという気持ちが、日本からは感じられなかった」

――オマーン戦もそうでしたが、集合から試合までの時間が短く、2〜3回の練習しかできません。オマーンはセルビアで1カ月の合宿を行いましたし、サウジアラビアも準備の時間を十分に取っています。2連戦の初戦はいつもこうなります。

「君の言う通りだが、高いレベルではドイツもフランスもアルゼンチンもブラジルも、どこも日本と同じだ。中国やベトナム、サウジアラビアならひと月なり数週間の準備ができるだろうが、日本の選手たちはヨーロッパのクラブで毎週プレーしているし、監督は3年間このチームを指揮している。選手もスタッフもお互いをよく知り、経験に溢れた選手たちもいる。足りないのはパッションであり野心や決意だ。プレーの強度もなかった。選手は自分たちの経験に依拠しようとしたが……、足りなかったのはフラム(フランス語で情熱、炎などの意)だ。選手たちが本当に勝ちたがっていたか、勝てると信じていたかどうかわからないが、魂はなかった。たしかにあと3日の余裕があれば違うのだろうが、それが負けた理由だとは私には思えない」

――森保はとても合理的で知的な監督ですが、情熱や決意といったメンタルの強さは彼の欠点のひとつかも知れません。

「彼はサッカーをよく知っているとは思うが、マネジメントはまた別だ。選手を刺激して気持ちを高め、彼らのリアクションと最高のパフォーマンスを引き出す。グループに最大限の力を発揮させるのがマネジメントだ。その点で日本人監督は外国人監督とはやり方が違う。欠けていたのはその部分で、チームは眠っていた。選手も怠けていた。

 理性の部分に関しては、私は何とも言えない。ただ、チームの出来は悪く、素晴らしい日本代表とは言えなかった。最終ラインの選手たちは歳を取っていた。長友も酒井もベテランだ。柴崎も、他の中盤は……」

――柴崎は酷かったです。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/91df7a4028824bb27e35af1a2b6510469703fe71