エンタメ 週刊新潮 2021年7月8日号掲載

「芸人」が「裁判」で銭闘――。本気(マジ)を嫌い、世の中すべて洒落(しゃれ)のめす……そんな業を背負ったはずの人間にしては、何とも野暮(やぼ)な話である。「ビートたけし」が、恩人であるはずの「バンダイ」をお白洲に引きずり出した。「アウトレイジ」な訴訟の背後にあるものは……。

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〈金に関しては、子供の頃から厳しく教育されていた。金のことでつべこべ言うと、母親にこっぴどく怒られたものだ〉
 かつてたけしは著書『全思考』の中で述べている。
〈誰だって、金は欲しいに決まっている。だけど、そんなものに振り回されたら、人間はどこまでも下品になるというのが俺の母親の考えだった〉
 なるほど立派な考え方である。誰しもそう生きたいと願うが、大抵はそうはいかない。金に振り回される毎日が関の山だ。が、たけしは100億円ともいわれる有り余る富を得て、後述するが実際、“教え”に近い人生を歩んできた。
 が、今のご自身はどうだろうか。御年74歳。後期高齢者への仲間入りを前に、集大成の日々――に見える一方で、法廷にアウトレイジな「銭闘」を仕掛けていたことは報じられていない。
 ――被告は原告に対し、金6738万円を支払え。
 そんな物騒な訴状が東京地裁に提出されたのは、2月10日のことだった。
 原告は北野武、つまりたけしご本人。被告と記されたのは「バンダイナムコアーツ」。バンダイナムコグループで映像コンテンツの制作などを主とする会社だ。

「両者の縁は古いですよ」
 と言うのは、さる古参の映画プロデューサーである。
「これまでたけしさんの撮った全ての映画をビデオやDVDで販売してきた。しかもそのほとんどの作品については出資し、製作者に名を連ねています。たけしさんの作品は、評価はともかく、興行的にはそれほど旨味がないのは業界では知られていますが、それでも30年間に亘(わた)って支えてきた。たけしさんにとって、大恩ある会社ですね」(同)
 その恩人をなぜ訴えたのか。訴状を見ると、たけしの訴えは以下の通りである。
     ===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/07121057/?all=1