「野球で人材不足解消」。兵庫県にある建設会社のユニークな新卒採用活動が注目を集めている。週末は地元社会人チームでプレーしながら、平日は社内で建築士など国家資格の勉強もできる。甲子園出場経験のある有力選手も含め、今年春は前年の6倍超の32人が入社した。
 コロナ長期化、新卒採用に影 「増やす」8社のみ―12年ぶり低水準・大手100社

 一般的にきつい、汚い、危険の3K職場のイメージが残る建設・土木業は採用に苦労してきた。業界を挙げて改善に取り組んでいるが、吉田組(姫路市)の2020年春の新入社員は事務系を含めて5人だった。
 「野球」を売り物にした新卒採用は、自身も社会人野球の経験がある壺阪圭祐人事部長のアイデアだ。企業業績が新型コロナウイルス禍で大きく悪化して社会人野球からの撤退が相次ぐ中、有力選手でも野球を続けられないことに注目。吉田組が支援する地元の社会人チーム「全(オール)播磨硬式野球団」(兵庫県市川町)でプレーしながら、土木や建築と無縁だった元球児らが必要な知識を習得できる環境を整えた。
 新入社員は、平日は現場で働いたり、社内の育成機関「勁草(けいそう)塾」で学んだりし、週末は野球という生活を送る。吉田組の主要取引銀行、みなと銀行(神戸市)も寄付を通じてチームを応援している。
 32人のうち、野球を続けたい思いで入社したのは15人。16年夏の甲子園で準優勝した北海高(札幌市)出身の下方忠嗣選手や、履正社高(大阪府豊中市)で甲子園に出場した山本侑度選手らだ。建築・土木系ではない、文系の学生にも門戸を開放している。
 壺阪氏は「どうにかして人材を確保しないといけない業界だ。(来年春入社の採用を含めて)成果は出てきている。今後も続けていく」と話している。


時事
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