2020年の映画興行収入は前年比▲45%減

コロナ禍でイベントや娯楽が大苦戦する中、昨年(2020年)の日本国内における映画興行収入は約1,433億円となり、過去最高を記録した前年(2019年)から▲45.1%減という記録的な減少となりました。また、1,433億円という数字は、現在と比較可能な記録が残る2000年以降でも最低となっています。

2015年以降の実績は以下の通りです。カッコ内は前年比。

 ・2015年:2,171億円(+4.9%増)
 ・2016年:2,355億円(+8.5%増)
 ・2017年:2,285億円(▲2.9%減)
 ・2018年:2,225億円(▲2.7%減)
 ・2019年:2,611億円(+17.4%増)
 ・2020年:1,433億円(▲45.1%減)

劇場の一時休業や最大収容人数の削減が直撃
2020年の興行収入激減の要因は、新型コロナウイルスの感染拡大に尽きます。感染拡大が顕著となった昨年3月以降、多くの劇場が長期間の一時休業を余儀なくされ、昨年春に発出された第1回目の緊急事態宣言解除後も、いわゆるソーシャルディスタンス確保のため、客席は実質半減となりました。

また、洋画を中心に大作の公開延期が相次いだことも痛手だったと言えましょう。そして、昨年末からのコロナ第3波襲来で緊急事態宣言の再発出など、かつて経験したことのない逆境が続いています。

さらに、観劇中の飲食が全面禁止になった劇場も数多くあり、ポップコーンや清涼飲料水など利幅の大きい販売も落ち込んでいます(観客から見れば非常に割高な飲食物、興行収入には含まず)。今後もこのような状況が続けば、閉館に追い込まれる劇場が続出する事態になるかもしれません。

「鬼滅の刃」が唯一の明るいニュース
一方、こうしたコロナ禍にもかかわらず、スーパーメガヒット作が誕生しました。ご存知の通り、昨年10月16日に公開となった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(以下、「鬼滅の刃」)は、あっという間に歴代興行収入のトップとなり、現在も上映中です。

何しろ、不滅の金字塔と言われていた「千と千尋の神隠し」の記録をわずか2カ月で抜き去ったのですから、その人気ぶりがわかります。

ちなみに、歴代興行収入の上位10作品は以下のようになっています(2000年以降〜、2021年2月7日時点)。

 ・第1位:「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(2020年) 372億円(注:上映中)
 ・第2位:「千と千尋の神隠し」(2001年) 317億円
 ・第3位:「タイタニック」(1997年) 262億円
 ・第4位:「アナと雪の女王」(2014年) 255億円
 ・第5位:「君の名は。」(2016年) 250億円
 ・第6位:「ハリー・ポッターと賢者の石」(2001年) 203億円
 ・第7位:「もののけ姫」(1997年) 202億円
 ・第8位:「ハウルの動く城」(2004年) 196億円
 ・第9位:「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」(2003年) 174億円
 ・第10位:「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(2002年) 173億円
「鬼滅の刃」の昨年における興行収入は、2カ月半(10月16日〜年末)で約325億円でしたから、全体に占める割合は約23%となり、1つの作品としては破格の数字です。しかも、劇場の最大収容人数を削減した中での結果ですから、驚異としか言いようがありません。

逆に言うと、「鬼滅の刃」が貢献しても前年のおおよそ半減という事実を鑑みると、コロナ禍で映画業界がいかに苦境に陥っているかが理解できます。「鬼滅の刃」の貢献度が低下する今年(2021年)以降の映画業界はどうなっていくのでしょうか。

2/17(水) 11:35
https://news.yahoo.co.jp/articles/712cd0151a615d792b39f44bbe53712d671da5db?page=2