日本のポップカルチャーにおいて、アイドルはなくてはならない存在。約10年前に「アイドル戦国時代」という言葉が生まれて以来、『AKB48』や坂道シリーズなどさまざまなグループが覇権争いを繰り広げてきた。しかしいくら流行が移り変わっても、一貫して変わらない点がある。それは、アイドルが「おじさん」の作る文化ということだ。

12月9日に放送された『2020FNS歌謡祭 第2夜』(フジテレビ系)では、元『欅坂46』のメンバー・平手友梨奈が出演。グループ脱退後、初となるソロ曲を披露した。『ダンスの理由』と題したその曲の中で、平手は「あの娘を見てると一番つらかった頃の私を思い出すの」「誰もいなかったから仕方なく踊るしかなかったんだ」といったフレーズを歌い上げる。

平手は脱退以前、グループ内でトラブルがあったのではないかと推測されていた。そうした背景もあり、同曲の思わせぶりな歌詞はファンの間で大きな話題を呼ぶことに。しかし曲のクレジットを確認すると、作詞を担当していたのは元「欅坂46」のプロデューサー・秋元康氏。実際には平手本人が苦悩を吐露していたわけではなく、プロデューサーに“言わされている言葉”にすぎなかったようだ。

大きな歪みを抱えたパフォーマンスに、ネット上では《作詞は秋元康なんだ。結局自分の力じゃないのね》《結局大人のおままごとの道具やん…》《すごい逸材なのに周りの大人たちの好きなようにされてるだけで、かわいそう。手のひらで踊らされてる感じ》といった反発の声が上がっている。

アイドルが自分の足で踊る日は来るのか?

日本のアイドル文化は独特の発展を遂げており、海外から“少女たちの性的搾取”と批判を受けることも。それ自体は極端な見方かもしれないが、ほとんどのアイドルが事務所やプロデューサーの意向に従って活動するものであり、受け身の存在であることは間違いないだろう。

表舞台に立って笑顔を振りまくアイドルと、その裏で商業的な戦略を打ち出す大人たち──。大手事務所ではそんな関係性ばかり目につくが、インディーズアイドルなどではセルフプロデュースを行っているケースも珍しくない。

その最も成功した例の1つといえば、2017年に活動休止した『生ハムと焼うどん』だろう。同ユニットでは作詞・作曲はもちろん、ステージ上で行う寸劇なども本人たちが創作。オリジナリティあふれる世界観をもったアイドルユニットとして、高い評価を得ていた。

ちなみに「生ハムと焼うどん」の元メンバー・西井万理那が現在所属する『ZOC』も、独自のアイドル像を模索しているグループ。アイドルとプロデューサーという関係ではなく、シンガーソングライターの大森靖子が“共犯者”という立ち位置で同伴しているのだ。

また、ここ数年で大ブレイクを果たした6人組アイドル『BiSH』では、メンバーのソロプロジェクトが展開中。アユニ・Dは『PEDRO』名義で作詞・作曲なども担当し、シンガーソングライターのような活躍を繰り広げている。

とはいえメジャーシーンでは、いまだに男性プロデューサーの意向が強く働いている状況。アイドルは“女の子の夢”でありながら、女性がクリエイティブに活動できる職業とは言い難い。今後は誰かの手のひらの上で踊るのではなく、自分らしいステージで踊るアイドルが増えていくことを期待したい。

2020年12月20日 まいじつ
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