跳びはねて喜んだり、泣いて悲しんだり。それぐらい感情を大きく揺さぶられるのがアメリカ大統領選なんです――。そう話すのは、タレントとして幅広く活躍するパックンこと、パトリック・ハーランさん(49)です。なぜそこまで感情移入するのか。大統領選への思いを聞きました。

――すでに民主党候補バイデン氏に投票したそうですね。どんな気持ちで一票を投じましたか?

 僕の出身地で投票権を持つコロラド州は近年、民主党が優勢で、オバマ氏やヒラリー・クリントン氏が勝ってきました。今回もバイデン氏が勝つでしょう。僕も希望を込めて一票を入れましたが、結果がある程度わかっているという点では、そこまで大きな意味を持つ一票ではありません。その一方で、下手したら、またトランプ氏が再選してしまうかも、という気持ちがぬぐえない。前回の選挙はトラウマのようになっていて、今でも3カ月に1回くらい「これは夢なのかな」と思うんですよ。「本当に大統領はトランプなの?」と。現実を疑うような4年間でした。

――それほど4年前のトランプ氏勝利は衝撃的だったのですね。

 想像を絶することでした。選挙戦の段階からトランプ氏は、「オバマケア」(オバマ政権が進めた医療保険制度改革)の撤廃などを訴えていて、僕は彼が「非常識人を演じているんだ」と思っていました。だいたいの政治家は、選挙中は実現可能性が薄いことでも主張しますよね。有権者に夢を抱かせるためでしょう。

 でも、トランプ氏はオバマケア撤廃を本当に実行しようと、大統領就任後には訴訟を起こしているんです。一方で、「Repeal&Replace(撤廃して置き換える)」と選挙では訴えていたのに、置き換わる制度は何も準備していない。大勢の国民が無保険状態になっていいと思っているんですよ。

 イラン核合意やTPP、パリ協定からの離脱もそう。代わりとなる国際的な制度や枠組みは何もない。それが「想像を絶する無責任さ」だと僕は思うんです。選挙運動で非常識なことを言っても、結局、大統領になれば中道に寄るだろうと思っていましたが、トランプ氏は非常識人のままだった。僕の見通しも甘かったですし、振り返ると悲しくなりますよ。

 ――今回の選挙では、バイデン氏には熱狂的な支持者は少なく、消極的な支持者が多いと言われていますね。

 今回はトランプ大統領に対する国民の意識を問う選挙です。民主党支持者は、トランプ大統領を追い出すことが第一目的だと考えていると思います。だから「どうしてもバイデン氏がいい」という人は少ない。「トランプ以外がいい」と言う人が多いことが、バイデン氏の追い風になっている。悪い人とは思わないけど、別に大好きでもない。バイデン氏はあくまでも「ザ・中道派」的なな政治家。(ノーマルという意味で)「食パン」のような政治家です。

 ――ハーランさんがこれまで見てきた過去の大統領選で、印象的だったのはどんな場面ですか?

 1988年の大統領選ですね。…

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