7月18日に自死した俳優の三浦春馬(享年30)。彼の遺作のひとつとなったドラマ「太陽の子」(NHK)の時代考証に、NHK内部から疑問の声があがっていることが「週刊文春」の取材でわかった。

 同作は8月15日の終戦記念日に放送された1時間20分の単発ドラマ。太平洋戦争末期、原子爆弾開発を命じられた科学者たちの悲劇の物語だ。三浦は肺の療養のため一時帰郷した陸軍下士官・石村裕之を鬼気迫る表情で演じ、10.7%の視聴率を記録した。

 この作品に対し、

〈芸熱心だったというこの俳優(三浦)の、最後の演技がこんな杜撰な衣裳では気の毒でならない〉

 と声をあげるのは、NHKのシニア・ディレクター、大森洋平氏。大河ドラマを始め、数々の番組を担当してきた同局の時代考証の第一人者だ。上の文言は、氏が関係者に配信したメルマガで「太陽の子」での三浦について触れたもの。

 時代考証に対する疑問の一例として、大森氏は三浦演じる裕之の帰郷シーンを挙げる。
「どちらもない丸腰など絶対にありえない」

〈(裕之は)陸軍の下士官兵用の軍服を着ているのに、何故か襟章が将校たる「少尉」のものだった。しかも下士官兵なら銃剣、将校なら軍刀を左腰に吊らなければいけないのに、どちらもない丸腰など絶対にありえない〉

 あるいは、京都帝大から学生たちが小銃を担いで行進し、後輩らが幟を立てて見送るシーンについても、

〈昭和18年東京、神宮での学徒出陣壮行会のイメージを間違って理解したもの〉

 と指摘。昭和19年以降、学生たちは個別に出征したはずであり、同時期に入隊する場合でも、小銃を担いで行進したりはしなかったという。

 NHKは週刊文春の取材に対し、「ドラマ番組については考証などを踏まえながら、個々の番組の状況を勘案して制作していますが、さらなる意識向上を図っていきたいと考えています」と回答した。

 9月3日(木)発売の「週刊文春」では、NHKスタッフたちの心をつかんでいた三浦の演技にかける熱い想い、スタッフたちの惜しむ声、NHKと三浦のつながり、親族の声などを報じている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8a49902ea8d0251d7f29749020f9e9d90820f7e5