23日、若くして生涯を終えた女子プロレスラーの木村花さん(享年22)。
恋愛リアリティー番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」(略してテラハ/フジテレビ系・Netflix)の出演。

フジテレビとNetflixは当面放映を見合わせていたが、27日にフジテレビが放送の打ち切りを発表した。
メディア論の研究者で、テレビの制作現場にも精通する同志社女子大学の影山貴彦教授に「テラハ」の功罪について聞いた。

 ――事件の根本問題はどこにあるのか。

「テレビの作り手、受け手双方のレベルの低下と言えます。リアリティー番組という安易な演出と、
番組を真に受けて、すぐに怒りを発する視聴者、両方に原因があるでしょう」

 ――木村バッシングのきっかけは「コスチューム事件」。共演者の男性が彼女のプロレスコスチュームを洗濯。
乾燥機にかけてしまい、変色、縮んでしまったことに木村が激怒したことだった。

「リアリティー番組とはいえ、ヤラセではないけれど、盛り上がる演出はあります。
その昔“川口浩の探検番組”なら、洞窟に入るシーンで、
先頭を歩く川口浩の前には照明とカメラマンがいることを視聴者もわかって楽しんでいましたが、
視聴者は『テラハ』を映像のまま受け取ってしまう。

たとえば、深夜に屋外で告白するシーンで2人の顔が美しく映るよう照明が当たっているなどは、自然発生的な告白とは言えないでしょう。
コスチューム事件も、なぜ洗濯して乾燥機に入れなきゃいけなかったのか。“演出の意図”を感じざるをえません」

 ――コロナ禍で放映を見合わせている間に木村の事件をフィーチャーした「未公開映像」がアップされたことも、
アンチを増幅させたというが。

「テレビ現場の後輩たちの携帯には、前日放送した視聴率が分刻みのデータとなって送られてきて、
担当部分の成果が如実にわかります。局によっては収入も成果主義ですから、
炎上部分をより多く使ったほうが確実に数字がとれる、という安易な選択をしがちになります」

――番組の構造にも問題がある。

「出演者たちはトキの人になりたい半分素人。制作側にとっては、出演者はギャラが安くつき、言うことを聞く便利な存在です。
お膳立てされた空間で『カメラ回します』『よろしくね』と言われたら、期待に応えたくなるし、
そうしなければ出演終了するかもしれない危機感もある。演出家の中には強いものに弱く、弱いものに強い者もいる。
弱い者いじめの構造は制作段階からあるのです」

 ――受け手のレベルの低下も負のスパイラルに拍車をかけているという。

「皆がデジタル思考で白と黒の2択しかなく、グレーという考え方ができなくなっている。
背景を想像したり、人におもんぱかることなく、怒りの感情を爆発させてしまう。
こうして“無意識の中の悪意”がSNSを凶器に変えてしまっています」

 ――これからのテレビはどうなるのか。

「事件の舞台になった『テラハ』は番組終了にすべき。さらに根本原因を検証し、
負の連鎖を止めてテレビが変わるきっかけにしなければならない。
制作側は社会の変化を敏感に感じとり、新たな演出を見いだすのが仕事です。
これからは作る側も見る側も『人にやさしく』をテーマにテレビを楽しめるように変わるべきではないでしょうか」

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