テレビ朝日の夕方の情報番組「スーパーJチャンネル」で“不適切な内容”があったとして、ライブハウス業界が怒っている。2月に参加者の新型コロナウイルス感染が相次いだ大阪のライブハウスだが、3月中旬に大阪府はライブハウスでの感染拡大の終息を宣言。その後も業界はしっかりと休業を続けていたのに、同番組内でいまさら“ライブハウス叩き”を行ったというのだ。

 2日に同番組で放送された「困惑“満員電車”再来に悲鳴『まるでライブハウス』」とのテロップ入り画像がSNSなどで拡散され、ライブハウス関係者の間で物議を醸している。緊急事態宣言が解除されて、通勤ラッシュが戻ってきたことを表現するのに、ライブハウスをたとえに使ったことに関係者は激怒している。

 ビジュアル系ロックバンドの先駆的存在「44MAGNUM」のベーシスト・吉川“BAN”裕規はブログで「まるでライブハウス 悪者やん。コロナの影響で、ライブがキャンセルになって 経営難で泣く泣く閉店しなきゃならなくなったライブハウスが出て来てるのに。公共の電波で こんな事流したら あかんやろ」と指摘している。

 そんな中、ギタリストのNORIZO氏はテレビ朝日の社長宛てに内容証明郵便を送った。東京・目黒の老舗ライブハウス救済のクラウドファンディングで目標額の200%を達成したインフルエンサーの一人だ。

「初めて震えるほど怒りを覚えて涙が出ました。報道を使ってライブハウスを叩くとはどういう了見でしょうか。営業自粛要請に応じて休業したり、国からの補償などもなく廃業を余儀なくされたりした社会的弱者を公共の電波でむち打つのでしょうか」

 NORIZO氏はテレビ朝日に放送の経緯の説明と謝罪、訂正を求めている。

 ライブハウスが叩かれているかのような状況について、伝説のロックバンド「AUTO―MOD(オートモッド)」のボーカル・GENET(ジュネ)の弟で、元メンバーでもある社会心理学者の山岡重行氏はこう指摘する。

「新型コロナ流行初期に、大阪のライブハウスで感染者が出たのは事実のようですが、ライブハウスよりもスポーツジムでの感染者が多かった。しかし、マスコミはライブハウスを大々的に報道した。ライブハウスは“不良が集まる不健全な場所”だし、広告収入源と無関係だから、叩きやすいという判断が行われたと推測できます。そのような報道が、自粛で行動を制限され欲求不満を募らせる多くの人々に、スケープゴートとしてライブハウスを認識させることになったのでしょう」

 その上で「スーパーJチャンネル」の報道について、「『満員電車=3密状況=新型コロナ感染』という番組スタッフの連想ゲームが『まるでライブハウス』という不自然なフレーズを生み出したものと考えられます。特定業種に対する風評被害を生み出す無責任な表現です」と山岡氏。

 一方、現実のライブハウス業界は前に進んでいる。コロナ禍で休業したライブハウスなどを対象とした大阪府の補助金制度をPRする無観客配信ライブが7日に大阪市中央区で開かれた。

 大阪出身のアーティスト3組が出演し、歌手の矢井田瞳(41)は「今できるベストを探しながら、前に進めたらいい」と語った。

 補助金制度は感染拡大防止のために休業した劇場、演芸場やライブハウスが無観客で公演を配信する場合、府が最大70万円を支出するもの。音楽演奏のほか落語や歌舞伎など、5日までに約120件の申し込みがあった。

6/8(月) 17:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/01c4139ea2b0f2db49c5fe1bdc799ab5c50c8bc7