新型コロナウイルスの影響で、芸能・映像業界では公演や撮影の自粛が続く。NPO法人が業界関係者を対象に行った調査では、約八割が「収入がゼロ・減少した」と回答。業界にはフリーランスが多く、「生活ができない」と悲痛な声も。同法人は「影響は深刻だ」と訴え、経済支援やスタッフの安全を守る基準作りを求める要望書を六日に政府に送付した。

 調査はNPO法人「映画業界で働く女性を守る会」(東京)が四月にインターネットを通じて実施。カメラや美術、照明などの裏方スタッフや俳優の男女ら千七百十五人から回答を得た。うち、フリーランスは七割近い千百六十一人だった。

 仕事への影響(複数回答)としては「作品・公演が延期、または中止となった」と答えた人は千三百四十一人。「解雇、契約を切られた」という人も百人いた。収入がゼロになった人は44%を超え、減少した人も37%超と経済的ダメージが浮き彫りになった。副業を検討・始めた人、転職検討中の人も半数以上いた。

 千三百四十八人が「事業再開や生活への金銭的支援」を求め、「仕事が一切無い。先のことを考えると精神的にもきつい」(五十代男性・俳優)との声も。同法人によると、業界では口約束で業務を請け負うことも多いという。「契約書を交わし、労働環境を整えなければ業界の未来は見えてこない」(三十代男性・照明)と慣習の変化を求める意見もあった。

 法人代表で、自らも映画やドラマの小道具の仕事をしているSAORIさん(36)は、仕事が再開できても多くのスタッフや俳優が一緒に働く現場では「三密」を避けるのは難しいと指摘。「感染拡大をどう防ぐか感染症の専門家と連携し、ガイドラインを作ることも急務だ」と訴える。

2020年5月17日 朝刊
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