狡猾な団体だ。

国際オリンピック委員会(IOC)は日本時間21日、東京五輪の、「日本の安倍晋三首相が、既存の契約条件に沿って引き続き日本が負担することに同意した」と公式サイト内で公表。
同時にIOCの負担は「数億ドル(数百億円)になることは既に明らかだ」と述べたのだ。

■「1年延期は日本からの提案」

1年延期にかかる費用は3000億円規模と報じられているが、実際には5000億円とも1兆円を超えるともいわれている。いずれにしてもIOCは「我々は払っても数億ドル。
あとはすべて日本側で出しなさい」というわけだ。これが本当なら、安倍首相はとんでもない約束をしたことになるのだが、3月24日に行われたバッハIOC会長との電話会議に出席していた橋本聖子五輪相はこの日、
「経費の件は一切議題になかった。(政府として)合意した事実はない」とIOC見解を全否定。24日の会議に同席していた菅義偉官房長官も、「合意の事実はない」と語り、今月16日のIOCと組織委員会のテレビ会議でも、
「延期のコストを含む影響の取り扱いが共通の課題であることを確認し、今後、議論することで合意した」と説明した。

確かに16日の会議後、組織委員会の森喜朗会長も、「(延期経費は)どれぐらいの負担があるのか。IOCも、ともに考えていただかなければいけない部分もある。まだ話し合いを始めたばかり」と、IOCに負担を求める考えを示していた。

スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が「IOCに先手を打たれた」と言ってこう続ける。

「五輪の延期は、夏・冬通じて史上初めて。それに伴う多額の追加経費負担はIOCの財政を圧迫する。バッハ会長は先週、ドイツ紙のインタビューで、延期の費用は数億ドルを負担する覚悟があると語っていた。
公式サイトの見解はその考えに沿ったもの。日本側が延期経費を負担することで同意したという見解は、先月の電話会談で安倍首相の方から1年延期をIOCに提案したからだという理屈でしょう。
あくまで日本側から言い出したことであり、しかも、会議後に安倍首相は、『人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証しとして、完全な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催するためにバッハ会長と連携していく。
日本は開催国としての責任を果たしていく』と力強く語っていましたからね。IOCは今回の見解表明で経費負担問題の先手を打ち、あとは日本側で考えなさいということでしょう」

■「IOCは東京五輪中止を考えている」と専門家

そもそもIOCと開催都市との契約は、東京都がすべての運営責任を負担し、財産権などはIOCが独占するという、極めて不平等なものだ。今回も、IOCの見解が公になろうがなるまいが、
結局、東京五輪の延期にかかる経費は東京都と日本政府が支払うことになったはず。IOCからすれば、「数百億円でも負担するのだから日本は感謝しろ」とでも思っているのだろうが、
そのIOCは「すでに東京五輪中止を考えている」と、前出の谷口氏はこう言う。

「新型コロナウイルスの感染はオリンピックの5つの輪(南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア)に広がりパンデミック(世界的大流行)となった。それが原因で今年のオリンピックは吹き飛んだ。
今の状況では1年延期された東京五輪だけでなく、22年北京冬季五輪の開催さえ危ぶまれている。IOCは“五輪屋”だから口にはできないが、来年の開催は厳しいと思っているのは当然のこと。

公式サイトの最後に、札幌が立候補している2030年五輪についてひとこと触れているのは、『日本は来年の東京五輪が中止になっても30年の札幌があるよ』とも読み取れる。IOCは五輪が大好きな日本を手玉に取っているのではないか。
それにしても、パンデミックによって世界中で16万人以上の人が命を落としている。国連は今後、医療体制が脆弱なアフリカで感染が広がれば30万人が死亡する恐れがあると言った。
感染拡大の現実に向き合わず、五輪延期の金勘定をしている日本政府やIOCはまったく愚かです。人の命と五輪のカネ。ギャップの大きさを感じますね」

IOCは日本時間21日夕方になって、公式サイトの「安倍首相が同意」というくだりを削除。「日本側と延期による影響を共同で議論していく」と修正したが、これは組織委からの要請に応じたもの。
冒頭の見解が本音で、負担が日本に押し付けられるのは目に見えている。

4/22(水) 18:35配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200422-00000035-nkgendai-spo

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