いよいよと言うか、やっとと言うか、安倍晋三首相は7日の午後7時に初となる「緊急事態宣言」を出すようだ。新型コロナウイルスの感染が拡大している東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県と大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県で、8日の午前0時から効力が発揮され、期間は5月6日までの1ヶ月になるという。

該当する7都府県にはFC東京、東京V、町田、浦和、大宮、柏、千葉、横浜FM、横浜FC、川崎F、湘南、YSCC横浜、SC相模原、G大阪、C大阪、神戸、福岡、北九州とJ1〜J3で18チームが存在する。これら緊急事態宣言の発令される地域はもちろんのこと、それ以外の地域でも活動を休止するチームが相次いでいる。

Jリーグはすでにリーグ戦の再開・開幕の時期を白紙に戻したが、今回の緊急事態宣言でその期間はさらに延びるかもしれない。そこで気になるのが、10年総額で2100億円の契約を結んでいるDAZNとの放映権料だ。

村井満チェアマンは「Jリーグの収入はDAZNとスポンサー契約、マーチャンダイジングの収入があり、トータルで管理している。DAZNだけではないが、Jリーグが影響を受ければ(財源として)各クラブも影響を受ける。しかしアラームが鳴っているわけではないし、危険水域にいるわけではない」と4月1日のwebブリーフィングで話していた。

この時点ではJ3は4月25日、J1とJ2はそれぞれ5月9日と2日の再開・開幕を目指していた。ところが2日後、村井チェアマンは新型コロナウイルス対策連絡会議の提案を受け、臨時実行委員会でリーグ戦の再開・開幕を白紙に戻す決断を下した。そして今回の緊急事態宣言である。

Jリーグは今シーズンを特例として、リーグ全体の試合数75パーセントか、各クラブが50パーセント以上消化することでリーグ戦は成立するとしている。リーグ戦の「中止」ではなく「延期」ならDAZNマネーも期待できるようだ。

問題は、入場者収入という“日銭”が入らないJ2〜J3の財政基盤の脆弱なクラブが、体力的にどこまで持つのかということである。Jリーグは「安定開催融資」として10億円をプールしていて、J1なら3.5億円、J2なら1.5億円、J3なら3千万円を上限に融資することになっている。返済期限は原則1年間だが、今回は特例として3年間の猶予を持たせた。

その上で財務担当の鈴木徳昭プロジェクトリーダーは「(安定開催融資の)10億円の体力があるのでそれを使っていきます。次に理念強化分配金(J1を対象に上位4チームに3年間で還元される)100億円を活用します。10億円にプラスしてJリーグがお金を借りてクラブに融資することも話し合っていますし、各クラブもクラブごとに内閣府や各自治体と融資について話し合っています」と救済策を話していた。

ただ、10億円にプラスする理念強化分配金の原資はDAZNからの放映権料だ。リーグ戦が無事に再開・開幕できれば問題はないが、現段階で先行きは不透明なだけに不安は尽きない。そんなJリーグに救いの手を差し伸べようとしているのがJFA(日本サッカー協会)の田嶋幸三会長である。

自身も3月中旬に新型コロナウイルスに感染したものの、4月2日に2度目の陰性が確認されて無事に退院した。入院中は医療崩壊の危機を実感し、「感染者の子供は保育園でも隔離されている」と差別の実態を知ったそうだ。そんな田嶋会長は「JFAとしてJリーグに50億から100億を支援する用意はある」と話していた。

さらに札幌は、全選手28人が今シーズンの年俸の一部をクラブに自主返納する意思を示した。総額で約1億円にのぼるという。海外では香川真司がサラゴサに多額の寄付をしたことが話題になったが、こうした活動に敏感なのがサッカー界の良いところであり、開かれた世界でもある。できればそれが、プロ野球や大相撲など他のプロ・スポーツ界にも広がることを期待したい。

すでにドイツでは1、2部合わせて36チームが所属しているが、13クラブに「今シーズン中の倒産」が懸念され、2部の7クラブは「5月末」に、2部の別の2クラブは「6月末」までに倒産の危険があると報じられた。リーグの運営ではヨーロッパで一番厳格なドイツでさえ、リーグ戦の中止で放映権料と入場料収入の損失により大きなダメージを受けるという。

日本とドイツでは、感染者数と死者数で大きな差があるものの、感染の拡大を防ぐためにも1人1人が「3密」を避けるなどの自覚を持つ必要があるだろう。

4/7(火) 14:30配信
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