トップクラスは年収数億円ともいわれる「YouTuber」。
だが、現実は厳しい。ITジャーナリストの高橋暁子氏は「ほとんどの人は十分なお金を手にすることはないだろう。
収益が8000円以上にならなければ振り込みはなく、チャンネル登録者1000人強のある配信者は『振り込まれるのは2〜3カ月に一度』と話す」という――。

■2年間で急拡大したYouTubeの広告市場
「将来、人気YouTuberになりたい」。ある小学生男児は眼をキラキラさせてそう言った。「ヒカキンとかフィッシャーズみたいな楽しい動画を投稿してみんなに楽しんでもらいたい」。

同じような夢を語る小学生は少なくない。YouTuberは子どもが将来なりたい職業の定番となりつつある。私は小学校でたびたび講演しているが、テレビに出演するタレントは知らなくても、YouTuberならわかるという子どもは多い。

宮迫博之さんや江頭2:50さん、本田翼さんや川口春奈さんなど、YouTubeを始める芸能人も増えている。Googleの発表によると、YouTubeの広告収益は2019年の1年間で約151億5千万ドル(約1兆6665億円)であり、2年間で86%増という成長率の高さを誇る。

プラットフォームとしてのYouTubeの人気は高まるばかり。小学生たちは「YouTuberになったらお金持ちになれるんでしょ」と言うが、現実は厳しい。

■上位層は年収数億円の「YouTube貴族」
たしかにトップクラスのYouTuberは年収数億円を稼いでいる。

マーケティング支援会社「BitStar」(東京都渋谷区)が2020年1月に発表した「インフルエンサーパワーランキング2019 by BitStar」によると、国内のチャンネル総再生数の1位は「東海オンエア」で9億7939万回だった。愛知県岡崎市を拠点とする6人組グループのチャンネルだ。

動画再生による広告収入は公開されていないが、1再生回数あたり0.3円と仮定すると約3億円に上る。しかもYouTuberの収益は、Googleからの広告収入だけではない。企業とのタイアップやイベント出演、グッズ販売などを行う例もある。

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7位となったヒカキンは2018年4月にある番組で、「(年収は)具体的な金額で言ったら、(明石家)さんまさんの3分の1くらい」と答えている。さんまさんの年収は10〜15億円程度とみられることから、ヒカキンの年収は3〜5億円程度と考えられる。

海外ではどうか。米誌フォーブスがまとめた「もっとも稼ぐYouTuberランキング」(2018年6月1日〜2019年6月1日)では、1位はアメリカの8歳児、ライアン・ケイジくんによるおもちゃのレビューチャンネル「Ryan's World」(旧「Ryan ToysReview」)だった。

同チャンネルは2015年に開始し、2019年の視聴者数は2290万人。年収は前年より400万ドル増の2600万ドル(約28億6000万円)だった。2位はスポーツなどのパフォーマンスを披露するチャンネル「Dude Perfect」で2000万ドル(約22億円)。3位はロシアの5歳児、アナスタシア・ラジンスカヤちゃんで、1800万ドル(約19億8000万円)だった。

■儲かるユーチューバー、事務所による充実のサポート
YouTuberは個人でもできるが、多くの有名YouTuberは事務所に所属している。事務所に所属すると、企業タイアップの契約がしやすいほか、スケジュール調整や撮影・制作支援などさまざまなサポートを期待できるからだ。

現在、国内にはUUUM、VAZ、Kiii、E‐DGEなど、筆者が把握しているだけで10以上のYouTuber事務所がある。一方、YouTuberと事務所の間でトラブルも起きている。その多くは、収益とサポートに関することのようだ。広告収益から2割前後を事務所にとられてしまうため、サポートの価値を実感できていないと「損をしている」と感じてしまう。

このため、すでに多くのチャンネル登録者を抱えており、事務所にサポートを依頼しなくてもいい有名YouTuberが独立する動きもある。2020年2月、大食い動画で知られる木下ゆうかさんは、事務所であるUUUM離脱を発表した。木下さんは、チャンネル登録者数が542万人を抱える人気YouTuberだ。

木下さんは独立した理由について「新しいことにチャレンジしたい」と語っている。大勢のファンがおり、収益基盤を確立できていれば事務所に所属しなくてもやっていけると判断したのだろう。

https://news.livedoor.com/article/detail/17915911/
2020年3月5日 9時15分 プレジデントオンライン