※この記事にはネタバレの要素があります。

何百回と説明を受けることに加えて
正解の形を一度見せてもらえると
理解度が格段に変わる
(『鬼滅の刃』第192話「廻る縁」より)

 炭治郎が死の淵で見た先祖の記憶は、無惨を倒すために必要な“日の呼吸”の十三個目の型を伝えるものだった。『鬼滅の刃』第192話(『週刊少年ジャンプ』2020年10号)では、炭治郎が悟った十三個目の型がどのようなものであるかが明かされ、いよいよ無惨との戦いの幕が切って落とされた。

 十三個目の型の正体は、おそらく連載の初期から練られていた設定だろう。これまでの炭治郎の戦闘のスタイルを昇華させながら、物語の伏線を見事に回収するものであり、無惨との戦いが最終決戦であることを予感させる。一方、ここまで最終決戦らしい展開が続くと、「無惨を倒したら連載終了か?」という部分が気になってくる。

 『週刊少年ジャンプ』が、読者アンケートによって連載の継続を決める「アンケート至上主義」という編集方針を採っていることはよく知られている。人気がなければ容赦無く打ち切られるし、それは長く連載が続く作品でも同様だとされている。そのため、打ち切り寸前の作品が突然、物語の方向性を急展開したり、あるいは人気絶頂の作品が“やめどき”を見失い、マンネリに陥るといったケースも見られてきた。それは週刊漫画誌ならではの臨場感溢れる作品を生み出すことに繋がってもきたが、後半であらゆる設定が崩壊してしまい、その完成度に疑問符が付くことも少なくなかった。実際、『ドラゴンボール』の作者・鳥山明の初代担当編集である鳥嶋和彦氏は、同作について「フリーザ編で締めるべきだった」と語っており、もしフリーザ編でやめていれば、鳥山明は他のヒット作を3本は出せていた、とさえ考えているようだ。(参考:『ドラゴンボール』のやめ時はフリーザ編だった!? 初代担当編集・鳥嶋が明かした『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』の裏話)

 それゆえ、『鬼滅の刃』に対しては「ここで綺麗に終わらせてほしい」と願うファンの声も大きいが、社会現象になるほどの人気ぶりである。現在の無惨戦の後も何らかの方法で継続される可能性もあるだろう。


 今回の無惨との戦いの後、もしも連載が継続されるとなったら、考えられるのは以下の3つのケースだろうか。

1:無惨より強い大ボスが出てくる→これまでの設定が台無しになるため、流石にないだろう。

2:過去の回想を第二章として描く→『グラップラー刃牙』などは中学時代の刃牙に戻ってうまく話を繋げていたが、『鬼滅の刃』は炭治郎が弱かった時から丁寧に描いてきているので、これもないだろう。それに、登場人物の過去に遡るスピンオフなどは、ノベライズ版などですでに描かれている。

3:世代交代→『ジョジョの奇妙な冒険』のように、一気に孫の代などに時代が移る。ついでに能力や設定も大きく変える。これはありえそう。同作が『ジョジョの奇妙な冒険』から大いに影響を受けていることは周知の事実なので、無惨の死後から100年余りが経過し、現代版の『鬼滅の刃』が描かれるという可能性は否定できない。というか、読んでみたいかも。物語の舞台を大正時代に設定したのは、むしろそのためではないだろうか。

 おそらく、無惨の伐倒後も物語が継続するとすれば、「3」の世代交代になるのが自然ではないだろうか。読者の納得感や『ジョジョの奇妙な冒険』の影響を鑑みるに、それしかないように思える。……いずれにせよ、『鬼滅の刃』が無惨戦をどう描き切るかは、少年漫画の連載問題を考える上でも注目に値するはずだ。納得できる結末を望みたい。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200203-00010022-realsound-ent