朝日新聞社が大規模な早期退職者募集を12月から始めていることが分かった。
7月には毎日新聞社の早期退職募集が話題になったばかりということもあり、業界に衝撃が広がっている

朝日新聞の関係者によると、対象となるのは来年3月時点で45〜59歳の社員で、バブル期に大量採用された社員たちも含まれる。
とりわけ話題を呼んでいるのは、退職時の年収を基準に、その3〜4割程度が60歳まで月額支給されるという点だ。

仮に年収が1200万円だった場合、月に30万円〜40万円(年収ベースで360万円から480万円)という、なかなかの好条件にも見える。

新聞社とネット企業の攻防を追った『2050年のメディア』などの著作があるノンフィクション作家の下山進氏は
「これくらいの優遇措置を取っても、会社にいてもらわない方が経費としては圧縮されるから、ということだ」と話す。

「実はWindows 95が出た95年から2000年代の半ばまでは新聞の発行部数は持ちこたえている。
しかし2009年には9%だったスマホ普及率が2年間で50%にまで伸び、移動通信システムが3Gから4Gになるのと反比例するように落ちていった。

有価証券報告書を元に朝日新聞の売上推移を遡ってみると、2004年と2018年では約1600億円、3分の1以上の売上が蒸発している。
しかもこの傾向に歯止めがかかっていないので、支出を絞っていかなければならないということだ」。

下山氏によると、こうした苦況は朝日新聞にとどまらないという。

先月には、とあるコンビニの“新聞返品表”なる画像がネットで拡散したこともあった。
「読売新聞も部数減に悩んでいる。読売新聞は全国各地の名士などに販売権を渡し、
“このエリアではこの人以外は読売を売ってはいけない”という“自営専売制”というイノベーションを起こした。

これによって専売店の店主は読売新聞を売れば売るほど生活が豊かになるため、必死に拡販していった。
結果、読売は1970年代に朝日新聞を抜き日本一になり、2000年代初頭には前人未到の発行部数1000万部を超えるまでに至った。

しかし、このイノベーションに囚われてしまったがために、主戦場がデジタルに移行する流れになっても、紙から抜けることができなかった。
だから今でも紙を取らなければデジタル版(読売オンライン)のIDとパスワードが付いてこない」。

週刊東洋経済の山田俊浩編集長は「雑誌も同じで、21世紀に入って非常に大きな減り方をしている。
やはりインターネットメディアの発展と共に、紙は非常に厳しくなった。ただ、“新聞紙”なのか、“新聞のデジタルメディア”なのかは切り分けて考えなければいけない。
若い人たちは購読していないし、高齢化が進むに連れ、紙については減少していくと思う」と指摘する。

■「放送業界にも破壊的な縮小がくる」

さらに下山氏は来る5Gを見据え、放送業界も他人事ではいられないと警鐘を鳴らす。

「新聞・出版は90年代に比べて総売り上げが約半分になっているが、民間放送の場合、民放連のデータではほぼ横ばいできている。
しかし私は、これから破壊的な縮小が来ると思っているし、それはすでに始まっていると思う。海外からはAmazonやNetflixなどが入ってきていて、
バラエティー番組などの配信を始めているし、まず広告の部分が変わっていくと思う。

このAbemaTVのような取り組みも始まってはいるが、技術的に可能なはずなのに、地上波放送を同時にスマホに流すということをやっていない。
やはり放送業界も、地上波で電波を流し、それを受像機で見る、ということから離れられずにいると思う。
NHKがネット同時配信を始め、これに民放が追随すれば、まずローカル局がキー局の番組を流すことの意味がなくなってくる。これは大きな変化になるだろう」。
https://times.abema.tv/posts/7031864