イギリスのロックバンド「Coldplay(コールドプレイ)」が、出したばかりの最新アルバムのツアーを行わないと発表した。環境に大きな負荷をかけるためとしている。

ボーカルのクリス・マーティン氏はBBCニュースの取材で、「私たちはこのアルバムではツアーはしない」と話した。

「向こう1、2年をかけて、どうすれば自分たちのコンサートツアーが持続可能なだけでなく、環境に利益をもたらすものになるかを模索する」

その上で、「私たち全員が、仕事をする最善の方法を見いだす必要がある」と述べ、将来的には自分たちのコンサートを「前向きな影響」のあるものにしたいと話した。

コールドプレイは22日に最新アルバム「Everyday Life」をリリース。通常は数カ月かけてツアーを行うが、今回はヨルダンで2公演をし、その模様をYouTubeで無料配信するだけにとどめる。

ヨルダン公演は、アルバムの「二面性」にちなんで、22日の日の出と日没に合わせて開催する。

コールドプレイは2016年から2017年にかけ、前作「A Head Full of Dreams」で5大陸ツアーを敢行。全世界で122公演を行った。

■カーボンニュートラルなツアーを

マーティン氏は次のツアーについて、「環境的に最善の状態のものにしたい。もしカーボンニュートラル(排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ状態)でなければがっかりする」と話した。

「最大の難関は飛行機での移動だ。しかし例えば、使い捨てプラスチックを使わない、太陽光発電を活用するなどの方法がある」

「これまでにたくさんの大型ツアーをやってきた。どうすれば奪うより与えるものが多いものに変えられるだろうか」

世界自然保護基金(WWF)はコールドプレイの方針を歓迎。「世界的に有名なアーティストが、地球を守る方向に動くのは素晴らしい」とコメントした。

WWFの気候変動部門を束ねるギャレス・レッドモンド=キング氏は、「気候と自然の危機を前に、私たちには(対策を)身を持って示す責任がある。次世代のために地球を守りたかったら、何もしないという選択肢はない」と述べた。

BBCのコリン・パターソン・エンターテインメント担当編集委員とのインタビューでマーティン氏は、今アルバム唯一のコンサートにヨルダンを選んだのは「普段では演奏する機会のない、世界の真ん中にある場所を選びたかった」からだと語った。

また、新アルバムはコールドプレイの世界的な視点を反映したものだと説明した。

「世界中を旅する幸運に恵まれたことで、私たちはみな同じ場所から来たのだと知ることができた」

「とても優しいイギリス的な言い回しをすれば、このアルバムで私たちは、地球上のどんな人も同じだと思っていることを伝えたい」

また、「Everyday Life」に収録されている曲の中には、BBCが取材したアフガニスタンの庭師やナイジェリアの賛美歌作曲家といったニュースに着想を得たものもあるという。

「私たちに共通している人間性を示すような個人の物語こそ、最高のジャーナリズムだ」

コールドプレイはヨルダン公演の後、11月25日にロンドンの自然史博物館で1度きりのコンサートを行う。このコンサートの収益は全て、環境保護団体に寄付される。

グリーン・ツアリング・ネットワークによると、1回のコンサートツアーで排出される二酸化炭素(CO2)のうち、34%が会場から排出される。このほか、宿泊施設から10%、グッズ販売で12%、アーティストの移動で9%、販促活動で2%となっている。また、観客の移動による排出は33%を占める。

https://www.bbc.com/japanese/50512578