勝海氏は3月28日、Twitterで<頂いたご指摘を真摯に受け止めまして、今後はそういったご指摘を再度頂戴することのないように、自分自身を常に律しながら精進していきたい>と騒動について謝罪。しかし盗作か否かには触れず、結果的として火に油を注ぐ事態となった。

さらに、勝海氏がSNSにアップしていた作品のうち、犬の顔を真正面から描いた絵にも「パクリ」疑惑が浮上。オーストラリア在住の写真家から抗議を受けて、当該作品はInstagram上から削除されている。勝海氏が出演しているイヤホンのCMにも視聴者から否定的な声が上がり、彼女自身が2020年の東京五輪や銭湯イベントのために捏造されたアーティストではないか――などと、個人攻撃にまで発展している。

 この件で、勝海氏だけが矢面に立って叩かれている現状には、違和感を覚える。この舞台裏には、勝海氏を「美人銭湯絵師」や「学生アーティスト」として担ぎ上げた複数の関係者がいるはずだが、彼らはいっこうに顔を出さない。そもそも、なぜ勝海氏は神輿に乗せられたのだろうか。

 この炎上騒動の舞台裏について、広告業界に詳しいコミュニケーション・戦略PRプロデューサーで東北芸術工科大学教授の片岡英彦氏に話を聞いた。

勝海麻衣さんの「パクリ」作品は盗作と言える
――勝海麻衣さんの「パクリ」が炎上しましたが、そもそもどういう作品が「パクリ」と見なされるのでしょうか。アートには「オマージュ」や「インスパイア」という概念もありますが、「パクリ」とはどう違うのでしょうか。

片岡氏「そもそも芸術とは模倣から始まるものですし、『パクリ』という用語には定義がありません。そのため個人的には、パクリには『良いパクリ』と『悪いパクリ』があって、その境目はグラデーションになっていると考えています。

 では、『悪いパクリ』とはどういう状態かというと、3つの軸があると考えられます。一つ目は、『コンセプト』と『表現』を真似ることの違いです。たとえば、『獣の絵を描いて女性の強さを表現する』というのは『コンセプト』ですので、これを真似ても『インスパイア』であると言えます。しかし、虎というモチーフそのものや構図、筆のタッチなど“可視化”された『表現』を似せてしまうこと、これはアウトです。

 二つ目は、『新しい価値を加えられているか』ということ。ある作品を真似ていても、そこにまったく違う表現を加えて新しい価値を生み出し、場合によってはオリジナルを超えるほどの作品をつくったのなら、これは『オマージュ』といえるでしょう。

 そして三つ目、これはシンプルかつ最も大切なことですが、オリジナルの作品を明かしたうえで、『影響を受けました』または『オマージュです』と明言することですね。オリジナルに、それなりのリスペクトを払うということです。

 しかし、勝海さんはこの3つの軸を欠いたものを自分の作品として発表してしまったので『悪いパクリ』、つまり盗作であったと指摘できると思います」

――では、勝海麻衣さんは、なぜ「悪いパクリ」をしてしまったのでしょうか。

片岡氏「勝海さんはまだ学生ですから、他者の作品を模写して習作することもあるでしょう。プロのアーティストとして、『パクリ』に対する意識が甘かったとも考えられます。美術大学で学生を教えている立場としては、学生たちに『パクリ』がどういうことなのか、どういう事態になるのか、しっかり指導していかなければならないと痛感しています。指導する立場の人間が、生徒を批判することはあってはならないと思います。

 もちろん学生であっても、勝海さんはプロとして仕事を請け負ったわけですから、たとえ作品のクオリティは学生レベルであったとしても、オリジナルの作品を描くべきでした。しかも、広告代理店やPR会社は、勝海さんのビジュアルや若さ、学生という肩書きや、話題性を見込んで起用したでしょう。プロとしての完成度はともかくとして、それなりのフォローをしていれば、炎上は防げたはずです。

 代理店はイベント当日に描く絵については事前に把握していたはずですし、たった1日のイベント用の絵だとしても、しっかりとチェックをしておくべきでした。これについては、大人たちの考査が甘かったと指摘できますね」

2019.04.23
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