全国高校野球選手権は今夏、第101回大会を迎える。「新世紀」に入る高校野球をより良いものにするためには――。大阪の強豪校PL学園でエースとして活躍し、プロ野球広島を経て現在は大リーグ・ドジャースでプレーする前田健太投手(31)に聞いた。

 PL学園では1年生だった2004年から試合に出場した。同年夏の大阪大会は9試合中7試合に登板し、大会初の決勝再試合で前日に完投した先輩の中村圭からマウンドを託され、完投した。甲子園は1年夏の1試合、準決勝まで勝ち上がった3年春の選抜大会では4試合に登板して3完投した。

 「ここまで大きなケガはないが高校生のころは肩やひじが痛くなることがあった。体がしんどいときもたくさんあった。もう少し大会の日程にゆとりが欲しいし、2連戦までにとどめてほしい」

 新潟県高校野球連盟が導入を試みた投手の投球数制限には賛同する。

 「プロの僕らでも1試合で100球ちょっとしか投げない。僕らより体が強くない高校生が170、180球を投げるのはケガのリスクが高まる。大人が制限を設けてあげることはすごく大事なことだと思う」

 「投球数制限があればバッテリーはもっと配球を考える。どうやったら長いイニングを投げられるのか。考えることでバッテリーの成長につながる」

 投球数制限が部員が少ない学校には不利に働くという指摘もある。

「勝てなくなるのは監督、コーチのミスで、指導者の力の見せどころじゃないかなと思う。指導者は選手をよくするためにいると思うので。そういう意味で指導者のあり方ってのも見直されるきっかけになると思う。良い選手を取るというより良い選手を育てる考えになってくれれば」

 PL学園の指導は投手への配慮を感じたという。

 「大阪の春の大会はほかの地域と違い、夏のシード権がかかっていないので、みんなの力を試す大会。3年時はエースだったが試合に出ずにランナーコーチをしていたこともあった。好きなときにブルペンで投げればいいと言われ、1カ月入らないこともあった。体を完璧にリフレッシュしてから投げる。『休み肩』の方が球は速いと思っていた」

 ■投げ込まなくても制球力養える

 前田の特徴の一つには高い制球力がある。制球力を高めるためには練習である程度の球数を投げこむ必要があるのだろうか。

 「考えて投げれば少ない球数でコントロールは改善できると思う。投げないと身につかない、というものではない。大事なのはやっぱりキャッチボール。肩を作るためにするのではなく、色々試す場所にする。指のかかり具合を探ったり、良い投球フォームを探してみたり。いいなと思ったことをブルペンで試す。60球投げれば、60回試せる」

 ある程度投げ込んで疲れてからの方が、力が抜けて投球が良くなるという考え方には疑問を持つ。

 「じゃあなんでそのフォームで1球目から投げられないのって僕は思う。『200球目からいいフォームで投げられた』では、すでに試合は終わっているじゃないですか」

 「投手の肩は消耗品」という言葉は意識してきた。

 「大リーグに来る2、3年前(2013年ごろ)ですかね。どうやったら野球人生を長くできるのか。あと10年、野球をするためにどこで球数を減らせばいいのだろうと考えたときに、試合のなかでは無理。じゃあ、ブルペンで減らそうとなった」

 2013年当時は25歳。自己最多に並ぶ15勝を挙げ、広島の絶対的エースだった。

 「以前、僕は(先発と先発の間のブルペンで)40〜45球を投げていたのを15にした。年間の先発回数が最大30だとしたら約1千ぐらい減らせる。すごいことじゃないですか? オフシーズンの投げる数も減らす。年内はあまり投げない。だいたい年明けから投げ始める。そういうのも計算していったら、1千〜2千球近く減らすことができるので肩にかかる負担はかわってくる」

 複数投手制でも魅力は失われないという。

 「僕が指導者だったら、野手でも3人ぐらい投げられる選手をつくりたい。分担制でも面白くなると思う。先発がダメでも1イニングだったらすごくいい投手はいる。そういう子たちが出てきて、面白さが出てくるのでは」

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4/16(火) 17:00配信 朝日新聞デジタル
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