今季の横浜DeNAベイスターズのスローガンは『Go Beyond the Limit.』(限界を超えろ)だが、一方でラミレス監督はキャンプ中から「Enjoy Baseball」と口にし、チームのムードを高めている。

“必死さ”と“楽しむ気持ち”。一見すれば相反する言葉のように思えるが、選手のなかでこのスタンスを見事に体現しているのが今季DeNAに入団した中井大介だ。

中井は昨年のシーズン後、11年間所属した巨人から戦力外通告を受けた。いわば選手として“限界”を突き付けられたわけだ。中井は当時のことを振り返る。

「突然のことで正直なところ、どうしたらいいのか自分では判断のつかない時間が続きました。けど前に進むしかない。自分は野球をやるという選択しか考えられなかったので、チャンスがある限り挑もうって。
そこでトライアウトを受けたのですが、幸いベイスターズさんに声をかけてもらって」

獲得を一番早く伝えてきたのはDeNAだった。中井は迷うことなく受諾した。

ただ、不安はあった。キャンプ前は、果たして自分には何が求められているのかはっきりとは見えなかった。
ゆえに自主トレでは動ける体づくりに主眼をおいた。また新天地ということで、当然のようにチーム内のことは右も左もわからない。

「新鮮ではあるんですが、知らない人も多いし、内心はドキドキでしたよ」

そんな中井にまず声をかけたのがキャッチャーの伊藤光だった。中井とは同じ東海地区出身の同級生。
以前はリーグも異なり軽く言葉をかわす程度の関係だったが、自身も昨年7月にDeNAに移籍してきたことから、力になれればと案内役を買って出た。
キャンプ前には横須賀の二軍施設に同行し、自主トレ中のチームメイトに中井を紹介した。

伊藤は中井にDeNAについて次のような話をしたという。

「中井はジャイアンツにいたから伝統とかしきたりとかいろいろ大変だったんじゃないかなと思うんですが、
ベイスターズは固くないというか……監督をはじめコーチの方たちも接しやすいし、相談したいことがあればしっかりと受け止めてくれるやりやすいチームだよという話はしました」

元来、明るくフランクな性格の中井は、キャンプに入ると早い段階でチームに馴染んでいった。
ほとんどが自分より若い選手だったが、率先して声を出し、明るい雰囲気を自らつくり上げた。沖縄での練習試合やオープン戦ではファーストストライクから振っていく積極的な打撃を披露し、
塁上や守備の合間にはリラックスした笑顔も見られた。

伊藤は、そんな初々しくも懸命な中井の様子をかたわらで見てきた。

「最初は不安だと言っていたけど、コミュニケーションが取れていたので、言うほど心配することはなかったですね。
今では後輩と一緒に食事に行ったり、しっかり馴染んでいますよ。ただ、大事なのはこれから。中井も僕も、前のチームでは生え抜きでやってきたけど、それはもう終わったこと。
お互い移籍してきた身だからこそ、結果を出さなければいけない。一緒に頑張っていきたいですよね」

オープン戦で中井は、ラミレス監督に積極的に起用された。左投手が先発のときはスタメンを張り、貴重な右の代打としても勝負どころを任された。
またセカンドを中心にサード、ファーストの守備にも入り、ユーティリティー性を発揮した。オープン戦17試合に出場し、打率.265というまずまずの成績で、開幕一軍を手中に収めるに至った。

再びプロ野球選手として生きる場所を得た中井は、例年とは違った感覚で野球に向き合えているという。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190401-00010002-sportiva-base&;p=2
4/1(月) 7:11配信