サッカー日本代表がアジアNo.1の座をかけてカタールと戦うアジア杯決勝は、2月1日23時(日本時間)にキックオフとなる。今大会の決勝トーナメントはいずれもテレビ朝日系列で中継されており、決勝戦の解説は松木安太郎氏と中山雅史氏が務める。

【大迫の決定的瞬間】「いいボールだ!」の直後、どうなったか?

 松木氏の解説でよく耳にするのが「いいボールだ!」という言葉だろう。だが、松木氏のいう「いいボールだ!」は本当に「いいボール」なのか。松木安太郎研究家で、ライターの岡野誠氏が検証する。

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 まずは、決勝トーナメントに入ってから松木氏が「いいボールだ!」(同義と判断できるサウジ戦後半28分の「ナイスボーおう!」も含む)と叫んだ時の状況と結果を挙げてみよう。

 以下、選手が蹴った直後の「いいボール」に限定して列挙する。ラインを割った後の「いいボール」、VTRを見ながらの「いいボール」は除く。大きく逸れた場合は×、クリアされたが角度的に合っていれば△、わずかな競り負けは○、日本選手が競り勝てば○とした。

【決勝トーナメント1回戦 サウジアラビア戦】
前半26分:「おお、いいボールだ!」 南野が右サイドからクロス → × 大きく逸れる
前半28分:「ナイスボーおう!」 堂安が右サイドからクロス → △ 相手がヘッドでクリア
後半15分:「おーいいボールだ! いいボール!」 柴崎のCK → ○ 惜しくも吉田麻也に合わず。相手がヘッドでクリア
後半39分:「よし、いいボールだ! きた!」 柴崎のFK → ○ 惜しくも遠藤に通らず。相手がヘッドでクリア(結果はゴールキックに)

【準々決勝 ベトナム戦】
前半8分:「うん、いいボール」 酒井宏樹が右サイドからクロス → △ 相手クリア
前半23分:「いいボールだ!」 柴崎のCK → ○ 吉田麻也ゴールも、VARにより取り消しに
前半42分:「いいボールだ!」 柴崎のCK → ○ 冨安ヘッドで逸らす

【準決勝 イラン戦】
後半10分:「いいボールだ!」 南野が左サイドからクロス → ○ 大迫ゴール

まとめると、以下のような結果だ。

サウジ戦:2勝1敗1分
ベトナム戦:2勝0敗1分
イラン戦:1勝0敗0分
3試合合計:5勝1敗2分

 なんと勝率8割3分3厘。△判定を×判定に変えても、勝率6割2分5厘。意外にも今大会の松木氏の「いいボールだ!」は本当にいいボールである確率が高い。いずれもゴール前のクロスに反応しており、選手がシュートする前に「いいボール」と言っている。決して結果論で「いいボールだ!」と言っているわけではない。

 おそらく視聴者の中には、松木氏の「いいボールだ!」イコール「あまりいいボールではない」という印象を持つ人もいるかもしれない。

 たしかに、以前の松木氏はクロスが上がると頻繁に「いいボールだ!」と叫ぶものの、簡単にクリアされるという傾向があった。

 今から14年前のドイツW杯予選アジア最終予選を振り返ると、よくわかる。2005年2月9日の日本対北朝鮮戦で松木氏がゴール前のクロスに対して「いいボールだ!」と叫んだ場合、4勝6敗(前半27分、41分、44分小笠原満男、前半27分鈴木隆行、前半32分、44分、後半1分、37分三都主アレサンドロ、後半12分、21分加地亮)で勝率4割。2005年3月25日のイラン戦では0勝3敗1分(前半1分小野伸二、前半35分加地亮、前半43分、後半5分中村俊輔)で勝率0割。

「いいボール」は、たいしていいボールではなかったのである。

 逆にいえば、この14年で、松木氏は不用意に「いいボールだ!」と叫ぶ傾向が少なくなった。長年の解説経験を経て、松木氏は自分が「いいボールだ!」と叫んだ時、あまりいいボールでないことに気付いたのではないか。近年、「いいボールだ!」の精度が格段に上がっているのである。同時に、日本選手の技術が向上したことも読み取れる。

 決勝のカタール戦。松木氏が「いいボールだ!」と絶叫した時、日本に2大会ぶりの栄冠が近付く。

NEWSポストセブン
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